今こそキチンと学びたいシニアのためのお金のはなし
「老後のお金が不安…」という方、必見!気になるお金の疑問を家計再生コンサルタントの横山光昭さんが解説します。
退職金の使い方は要注意!
退職金を運用してお金を増やそうと考えることは良いことです。ただ、定年後は収入も少なくなり、病気や介護など突然お金がかかる場合もあります。退職金を元手に投資をするなら、一度に大金を投資するのではなく、積立投資で時間をかけて、年3~4%程度の利益を目指して運用するのがおすすめです。
投資初心者はリスクを避けて
お金をコツコツ運用することが大切
お金の運用と聞くと、自分には難しいと感じる方もいるかもしれません。しかし、今は銀行口座にお金を預けておけば安心という時代ではありません。大手銀行の普通預金の金利は0・001%と低く、ATMの手数料が積み重なると預金がマイナスになってしまうことも。さらに、物価上昇が続くと、銀行預金が目減りする可能性もあります。お金を貯めるのも重要ですが、お金を運用することで資産の価値を維持していくことも重要です。
これから投資を始める方は、上記の資産運用の三原則、「長期」「分散」「積立」を守って資産を運用することをおすすめします。投資は「絶対に儲かる」ものではないので、資産が減ってしまうリスクもあります。そのため、もし定年後から投資を始める場合は、まず3年間の生活費を確保して、万が一に備えておきましょう。次に重要なのは、「どの金融商品を選ぶか」です。株式や定期預金、ETFなどいろいろな種類がありますが、初心者の方は月々100円単位から始めることができる「投資信託」がおすすめ。投資信託とは、投資家から集めたお金をファンドマネジャーという人がさまざまなものに投資して、収益を投資家に分配する商品です。投資先が複数あるため、相場変動によるリスクが分散できるのもポイントです。
※1 投資信託:投資家から集めたお金をファンドマネジャーが投資をして、収益を投資家に分配する商品。 ※2 ETF:上場投資信託のこと。株式市場に上場している投資信託を指す。
長期の積立投資でこんなに変わる!
下の図は、月々3万円を20年間、年利3%で運用した場合と、積立貯金した場合を比較
したグラフ。年々、運用益の差が開き、最終的には約265万円もの差がつくことに!
投資は60歳から始めても遅くない
定年後から長期投資を始めると聞くと、「今からやっても遅い」と考える方もいるでしょう。しかし、今は“人生100年時代”と呼ばれるほど、平均寿命も上がっています。左のグラフのように、60歳で積立投資を始めれば、80歳になったときに利益が出た分を医療費や介護などに充てることもできます。
定年後は「つみたてNISA」で投資信託を積立投資が◎
投資を始める際にさらに知っておきたいのが、投資に役立つ制度の存在です。「iDeCo(個人型確定拠出年金・通称イデコ)」や「NISA(少額投資非課税制度・通称ニーサ)」は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。イデコは金融機関が提示した商品の中から自分で投資する商品を選び、毎月もしくは年単位で一定額を積み立てるもの。利息や運用益が非課税となるメリットがありますが、加入できるのが65歳までなので、定年後の方にとっては積み立てる期間が短いのが難点です。ただし、節税のメリットがあるので、自営業者の方にはおすすめです。
もう一つのNISAは年齢制限がないので、長く続けられるのが魅力。NISAには、定額を積み立てて投資信託を購入する「つみたてNISA」と、まとまった額での投資もできる「(一般)NISA」の2種類があります。定年後の方には、やはり20年と長期の運用ができる「つみたてNISA」がおすすめ。腰を据えた運用ができる他にも、投資信託の取り扱いが多く、数ある投資信託の中から、「長期」「分散」「積立」に適したものを投資先として限定しているので、投資に慣れていない人も選択がしやすくなっています。なお、NISA制度は2024年1月に改定予定。改定内容は今後の連載で解説します。