2021.01.21 UP
健康と食

骨粗しょう症の検査ってどんな感じ?

内科医師の春田です。前回は骨粗鬆症の予防には更年期からの取り組みが大事であることをお伝えしました。骨粗しょう症は骨折の原因になりますが、骨折するまでは無症状であるところが怖いところです。

 

そのため、閉経を迎えたら骨の健康診断だと思って、骨粗しょう症の検査をおススメします。今回は骨粗しょう症の検査について紹介しましょう。

 

骨粗しょう症の診断基準

骨粗しょう症の検査を理解するためには骨粗しょう症をどうやって診断するかを知る必要があります。骨粗しょう症の診断基準は以下の通りです。(まずは診断基準をそのまま掲載します。用語についてはあとで説明しますので、難しいですけど、さっと眺めてくださいね)

 

Ⅰ.脆弱性骨折あり

1.椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり

2.その他の脆弱性骨折あり、骨密度がYAMの80%未満

 

Ⅱ.脆弱性骨折なし

骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD以下

 

脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折とはとても軽い力で起きた骨折のことです。ここでいう弱い力とは立っている状態から転んだ場合、もしくはそれよりも弱い力と定義されています。もちろんいつの間にか骨折も脆弱性骨折に含まれます。

 

脆弱性骨折のうち、椎体骨折と大腿骨近位部骨折が認められれば、即座に骨粗しょう症と診断されます。そのほかの部位、例えば肋骨や腕、すねの骨折の場合は骨密度の検査をして、その数字が低い場合に骨粗しょう症と診断されます。骨密度とYAM、SDについては次の骨密度の検査のところで解説します。

 

骨密度の検査

さて、明らかな脆弱性骨折がない場合、診断基準を満たすかどうか判断するために必要な検査は骨密度の検査ということになります。骨密度とは骨がどれだけずっしりしているかを示したもので、骨密度が低いと骨がスカスカである、ということになります。

 

骨密度の検査の主流はDXA(デキサ)法(DEXAと書かれている場合もあります)で、2種類の放射線を腰や足の付け根に当てて撮影をします。DXA法は最も正確な検査とされています。

 

検査結果の用紙には英語の羅列が多いので、普通は医師の「問題ないですね」で済ませがちですが、せっかくですから大事な数字の部分だけでも何を表しているのか見てみましょう。

結果で最も大切なのは診断基準にも記載されているYAMです。YAMはYoung Adult Meanの略で、若い人の骨密度と比較してどれくらいの骨密度なのかを表す数字です。

 

もしYAMが100%であれば若い人と同じ骨密度、80%であれば8割程度の骨密度ということになり、数字が低ければ低いほど骨がスカスカである、ということになります。診断基準では椎体骨折もしくは大腿骨近位部骨折以外の脆弱性骨折があり、YAMが80%未満であれば骨粗しょう症、もしくは脆弱性骨折はないけれどもYAMが70%以下であれば骨粗しょう症と診断されます。

 

ちなみに%ではなく、SDで表示されている場合もあります。SDは学校のテストでよく書かれていた偏差値の単位です。

その他に少し右下がりのグラフが載っている場合もあります。背景は上から緑(もしくは青)、黄色、赤になっているかもしれません。これは検査結果をわかりやすくしたものです。このグラフのどこかにご自身の検査結果の印(+だったり*だったりします)があるはずです。その印の真下には自分の年齢があります。

 

そして左側には骨密度の数字があります。背景の色はYAM別の色分けで、緑(もしくは青)のところにあればYAM80%以上、黄色は70~80%、赤は70%以下を示しています。つまり緑(もしくは青)のところにあればYAMは問題なし、赤のところにあれば骨粗鬆症ということになります。

 

さらにやや右下がりの3本の線があると思います。この3本の線の一番上と一番下の線の間がその年齢の平均的な範囲ということになります。一番下の線よりも自分の結果が下になっている場合は、同い年の人と比較してかなり骨密度が低いということになります。

 

骨密度の検査にはDXA法の他に、厚さの異なるアルミニウムと人差し指を同時にレントゲン撮影して簡易に骨密度を測るMD法やCTを用いたQCT法、超音波を用いたQUS法などがあります。

 

どの検査も痛みのない検査なので安心してください。ただしすべての病院ですべての検査ができるわけではなく、またそれぞれの検査にメリット・デメリットがあるので、医師と相談して検査方法を選んでください。検査方法や撮影部位が異なると比較しづらいので、基本的には毎回同じ検査を受けて経過を見たほうがいいでしょう。

 

その他の検査

脆弱性骨折の有無をみるためにレントゲン検査を行います。痛みがある場合など骨折を疑う場所があればその部分を、ない場合はいつの間にか骨折が起きやすい脊椎(背骨)のレントゲンを行うのが一般的です。

 

レントゲンで骨折がはっきりしないけれども、痛みが続くなど骨折が強く疑われる場合はMRIを行うこともあります。

 

骨粗しょう症と診断されたら、治療方針決定のために骨代謝マーカーと言われる数字を血液検査や尿検査で測定することがあります。骨代謝とは前回説明した骨吸収や骨形成のことです。骨吸収の数字が高いときは骨吸収を抑える薬を、骨形成が弱い場合は骨形成を促す薬を使うなど、治療方針の参考にするために検査します。

 

骨粗しょう症の検査はどうやって受ければいいの?

さて、今まで一度も検査受けたことがない人は、ぜひ骨粗しょう症の検査を受けることをおススメします。厚生労働省では住民健診として骨粗しょう症検診を市町村に行なうよう勧めていますが、努力義務になっているので(強制ではない)、一部の市町村では行われていないところもあります。

 

また、実施されていても多くは検査を受けることができる年齢が指定されており、年齢の末尾が0もしくは5の年(50、55、60、65、、、)などになっているため、この場合ですと現在51歳の人は4年も待たなければなりません。

 

さらに検診だけでは5年ごとにしか検査ができませんが、できれば閉経後の女性は骨密度が正常であっても1年ごとに検査を受けたほうがいいと思います。あくまで住民健診は国のサービスとして考え、間では人間ドック等を利用して骨密度の検査を受けるほうがおススメです。

 

人間ドックではオプションとして設定されていることが多く、費用は1000~10000円と幅がありますが、多くは1000~3000円程度です。検査に使う機械の違いや骨代謝マーカーまで測定する場合などで値段は異なりますので、内容も吟味して決めましょう。基本的には毎年受ける検査になるので、健診としては骨密度を見る検査(DXA法など)を1つ受ければいいと思います(健診で精密検査が必要と判断されれば、その後の検査は基本保険で受けることができるからです)。

県ごとに骨粗しょう症の住民健診を受けている割合の報告では、健診を受けている割合が多い県ほど大腿骨骨折の手術が少なかったと報告されており、これは骨粗しょう症の検査を受けることは将来の骨折の危険性を減らせることが証明された報告だと思います。

 

もし、骨粗しょう症と診断されても、すぐに治療を始めれば進行をくいとめ、場合によっては骨を今よりも丈夫な状態に戻すこともできます。骨粗しょう症の薬は様々な種類が開発されており、その人に合った薬を多くの種類から選ぶ時代になっています。次回はそんな骨粗しょう症の治療について説明します。

内科医

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医
大学病院、二次救急病院、在宅医療を経験。

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