2021.01.22 UP 0 閲覧数 9
健康と食

女性に多い「骨粗しょう症」の治療法とは?

骨粗しょう症シリーズの3回目です。これまで女性は更年期に一気に骨粗しょう症が進むこと、骨粗しょう症自体には症状がなく検査をしないと自分の骨の状態はわからないことなどを紹介しました。今回は骨粗鬆症の治療を中心にお話します。

 

女性にとって骨粗しょう症は他人事ではありません!

ところで皆さん、骨粗しょう症は私には関係のない病気、と思っていませんか?しかし私は女性であればほぼ全員が遅かれ早かれ気にしなければいけない病気だと思っています。

 

日本人の調査では50歳台で骨粗しょう症と診断される割合はわずか7%ですが、60歳台になると急に30%まで増加し、80歳以上の女性だと60%以上が骨粗しょう症です。こうなると骨粗しょう症は決してまれな病気ではなく、むしろほとんどの女性が何もしなければ骨粗しょう症になると思っていた方が良いでしょう。

 

さらに骨粗しょう症でない人の経過を見たところ、新しく骨粗しょう症になる人の割合は1.8%、1年で50人に1人が骨粗しょう症になる可能性があるのです。加えて大腿骨近位部骨折の発生率を見ると80才台の女性では1年で100人に1人と報告されています。

 

言い換えると80~89歳の10年間では10人に1人が骨折するということです。多くないですか?これは太ももの骨折だけの話で、実際にはそのほかに椎体骨折の発生率は70才台女性で10年間に22.2%とも報告されていますし、ほかの骨折もありますから、骨粗しょう症を放置するのはとても怖いことなのです。

 

ところが、日本で推定されている骨粗しょう症の患者のうち、実際に治療を受けている人は20%程度しかいません。そして、海外では大腿骨近位部骨折の発生率は年々減少しているにも関わらず、日本ではいまだに増え続けており、骨粗しょう症の治療については日本はとても遅れています。

 

私も実際に外来の患者さんが突然骨折して寝たきりになったり(つまり外来に通っていた患者さんがある日突然外来に来なくなり、通院が難しくなってそれきりお会いできなくなってしまったり)、数カ月間痛みが続いてがっくり体力が落ちてしまったり(もちろん痛み止めなどを使うのですが、骨の痛みはなかなかとれにくいのです)、とにかく高齢者になってからの骨折は若い人のようにあっさり終わらないのです。もし、あなたが80歳過ぎても元気に生きるつもりなら、更年期前後から骨を気にしてあげなければなりません。

骨粗しょう症の治療薬は3つの機序で

さて、前置きが長くなりましたが、骨粗しょう症の治療のお話に入ります。骨粗しょう症の患者が増えていることもあり、骨粗しょう症の治療薬もどんどん開発されています。前々回お話したように、骨は壊して(骨吸収)作り直す(骨形成)ことで丈夫に保っています。この骨吸収と骨形成のバランスが崩れると骨粗しょう症になります。

 

具体的には骨形成が追いつかないスピードで骨吸収が起きれば骨がスカスカになってしまうのですね。そこで、骨粗しょう症の薬は骨吸収を抑制する薬と骨形成を促す薬(と、その両方の効果を持つ薬)があります。そのほかに骨を作る材料であるカルシウムが骨にたくさん届くように作用する薬もあり、この3本柱で骨粗しょう症の治療は行われます。

 

骨に届くカルシウムの量を増やす薬はカルシウム製剤やビタミンD製剤、ビタミンK2製剤があります。カルシウム製剤はそのままカルシウムを補う薬ですね。ビタミンDは腸で食事からカルシウムの吸収を促進し、さらに吸収したカルシウムを骨に届ける役目があります。ビタミンKは骨にカルシウムがくっつく効果を高めてくれます。

骨吸収を抑制する薬の代表はSERM(サーム)、ビスホスホネート、抗RANKL(ランクル)抗体などがあります。

 

SERMは選択的エストロゲン受容体モジュレーターの略で、エストロゲン受容体にくっついて骨に対してエストロゲンと同じ作用をします。もともと高齢女性の骨粗しょう症がエストロゲン減少で起きていることを考えると、SERMは理論上閉経後の骨粗しょう症に適した治療薬です。実際閉経直後に骨粗しょう症と診断された場合は、長期に骨粗しょう症の治療が必要になるので、まずはSERMで治療が開始されることが多いと思います。

 

ビスホスホネートは骨を破壊する(骨吸収の役割を持つ)破骨細胞の働きを抑える薬です。種類が多く、今では1ヶ月に1回飲むだけでよい薬まで開発されており、多くの患者さんが使用しています。ただしビスホスホネートの飲み薬の難点は飲み方に制限があり、朝ごはん前の空腹時に、多めの水で服用し、その後30分は寝転んではいけない、という決まりがあります。この飲み方が難しい人ではビスホスホネートの皮下注射や点滴という方法もあります。

 

抗RANKL抗体も破骨細胞の働きを抑える薬で、こちらは半年に1回、皮下注射で投与します。1年に2回注射するだけなので、頻回に病院に通えない人や、飲み薬が飲めない人、もしくは飲み薬が多い人などに好評です。

骨吸収を抑制する薬は昔は骨粗しょう症の治療の基本的な薬でした。なぜならそれまでは骨形成を促す薬がなかったからです。ですから昔の骨粗しょう症の治療は基本的に減っていく骨密度をいかに食い止めるか、という治療でした。しかし、今では骨形成をを促す薬もできています。

 

骨形成を促す薬には副甲状腺ホルモン製剤、そして骨吸収を抑制しつつ骨形成を促す薬としては抗スクレロスチン抗体が2019年から使用可能となりました。もともと副甲状腺ホルモンは体の中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがあり、血液中のカルシウムが減少すると副甲状腺ホルモンが増えて、骨からカルシウムを放出する働きがあります。骨からカルシウムが放出されたら骨のカルシウム量が減るので、骨粗しょう症は進んでしまいます。

 

ところがなぜか副甲状腺ホルモンを基にして作られた副甲状腺ホルモン薬は骨形成を促す逆の効果が認められるのです。それまで骨吸収抑制しかなかった骨粗しょう症の治療に骨形成を促すことができる副甲状腺ホルモン薬は画期的な発明でした。しかし、副甲状腺ホルモン薬は新しく開発された薬であることや注射薬であることから、現時点では治療期間の上限が定められています。

 

同様に骨形成促進と骨吸収抑制の両方の作用を持つ抗スクレロスチン抗体も皮下注射の薬で最長12カ月の治療期間と定められています。骨形成を促す薬は値段が高いこともあり、誰でも使えるわけではなく、骨粗しょう症が強い、もしくはすでに骨折しているといった人に限定して使用されています。

 

骨粗しょう症の治療で重大な副作用「顎骨壊死」

あと、重要なのは歯の治療を普段からきちんとしておくことです。骨粗しょう症の治療薬、特に骨吸収を抑制する薬では副作用として「顎骨壊死」という病気があります。これは顎の骨に炎症が起こり骨の一部が腐ってしまうことです。歯医者で歯を抜いたときに起こり易いと言われていますが、実際は歯を抜かなくても起きることはあります。口の中には様々な細菌が定着していることも顎の骨が壊死しやすい原因の1つと考えられています。

 

顎骨壊死はビスホスホネートの飲み薬を使用している患者では1年で1万人に1人、ビスホスホネートの注射では1年で1000人に1人が発症すると報告されており、抜歯をする場合はその危険性が通常より10倍に増えると言われています。頻度はそれほど多くないので、過剰に恐れる必要はありませんが、顎骨壊死は一度発症すると治療に難渋することが多いので、骨粗しょう症の治療が始まってから歯を抜くことがないように普段から歯医者で歯のケアもしておきましょう。また、骨粗しょう症の治療中に歯科にかかる場合は、必ず骨粗しょう症の治療中であることを伝えましょう。

 

聞きなれない言葉が多くて難しかったかもしれませんが、安心してください。医師である私でも、すべて覚えているわけではなく、その都度薬の本を見てその人に合った薬を選んでいる状態です(私の病院は整形外科があるので、基本的には骨粗しょう症の治療方針は整形外科が決めてくれます)。

 

選択肢が多いとその人により合った治療ができるようになりますが、実際に治療方針を決定するほうは結構大変なのです(笑)。もちろん、皆さんがどの薬で治療するかを決める必要はありません。「骨吸収が強いので骨吸収を抑える薬を使います。」「いつの間にか骨折が見られるので、骨形成を促す注射を使いましょう」という具合に説明があるでしょう。

 

これだけ優れた治療薬がそろっても、まずは骨粗鬆症があるかないか、検査をしてみなければ治療は始まりません。まだ骨粗しょう症の検査を受けたことがない人は、ぜひ検査を受けてくださいね。

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