麻木久仁子さんの薬膳入門
高温多湿な日本の夏。屋外と室内の温度差で体調を崩しがちな上、今年は新型コロナウイルスの影響で運動量が減り、体力が落ちている方も多いのではないでしょうか。そこで、自宅でできる体のケアをご提案します。
食材の持つ力を引き出すことで、手軽な料理で体調を整える薬膳。家族やご自身の病気をきっかけに薬膳と出合った麻木久仁子さんにこの季節におすすめの薬膳レシピを教わりました。

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
1962年東京都生まれ。ラジオ、テレビで司会、コメンテーターを務めるほか、クイズ番組などでも活躍。2016年に国際薬膳師、2019年には国際中医師の資格を取得。
いつも明るく、知的なイメージの麻木久仁子さんですが、48歳の時に脳梗塞、49歳の時には初期の乳がんが見つかり手術を受けています。この2つの病をきっかけに食生活を根本的に見直し、そこで出合ったのが薬膳といいます。
「薬膳はあれを食べちゃダメという制約がないのが魅力。糖質制限や菜食主義もやってみましたが、制限があるものは続きませんでした。でも薬膳は何を食べても体のためになる、大切なのは偏らないこと、という考え方なんです」
薬膳というと特別な食材が出てきそうですが、今回麻木さんに教えていただいたレシピは、どれも簡単なものばかり。体調を崩しがちなこの季節、薬膳の知恵をぜひ取り入れてください。
野菜の中で最も体の熱を冷ます力が強いのがゴーヤです。フライにすると独特の苦味もやわらいで、一層おいしくなります。肉類の中でも豚肉は、体に潤いをもたらすとされています。汗をかいて失われた体の潤いを補いましょう。冷房で肌が乾燥した時におすすめです。

材料(2人分)
ゴーヤ……1本
豚ひき肉……150g
玉ねぎ……50g
セロリ……30g
きくらげ(戻したもの)……20g
にんにく……1かけ
パン粉……大さじ2
牛乳……大さじ2
塩……小さじ1/3
しょうゆ……小さじ1
小麦粉……適量
[衣]
小麦粉……適量
パン粉……適量
卵……1個
揚げ油……適量
作り方
- ゴーヤは1.5cm厚さの輪切りにし、スプーンを使ってわたをくりぬき、小麦粉を振っておく。
- 玉ねぎ、セロリはみじん切りに、きくらげはせん切りにする。にんにくはすりおろす。
- ボウルに豚ひき肉、2、パン粉、牛乳、塩、しょうゆを入れて粘りが出るまでねる。
- 3を1のゴーヤに詰め、小麦粉、卵、パン粉の順に衣をつける。
- 170度の油で揚げる。
しいたけは生命力の源である「気」を補い、松の実は体の潤いを補う、ともにアンチエイジング食材です。

材料(作りやすい量)
米……2合
しいたけ……4〜5枚
松の実……大さじ2
塩……小さじ1
しょうゆ……小さじ2
酒……大さじ1
作り方
- 米はといでざるに上げておく。しいたけは薄切りにする。
- 炊飯器に米としょうゆと酒、塩を入れたら2合の水加減にする。しいたけと松の実を入れて炊く。
長芋は薬用人参にも匹敵するといわれるほど疲労回復によい、滋養のある食材です。夏バテ防止におすすめです。

材料(2人分)
長芋……100g
長ねぎ……少々
だし……300㎖
ごま油……大さじ1
しょうゆ……小さじ2
塩……少々
作り方
- 長芋はすりおろす。長ねぎは白髪に切る。
- 鍋にだしを入れて煮立たせたところに1の長芋をとき入れ、しょうゆと塩で味をととのえる。
- 2を椀に盛る。フライパンにごま油を入れて煙がうっすら出るくらいに熱して、長ねぎにかけたものをのせる。
肉類は体力を補う食材ですが、中でも鶏肉は体を温めながら滋養します。生姜・長ねぎ・しその組み合わせは風邪予防の三銃士。この組み合わせは特に疲れて食欲もままならない時におすすめです。

材料(2人分)
鶏ひき肉……100g
生姜……10g
しその葉……6枚
長ねぎ……20g
酒……小さじ2
しょうゆ……大さじ1
片栗粉……大さじ1
塩……適量
鶏ガラスープ……350㎖
オリーブ油……適量
作り方
- 生姜はみじん切りにする。しその葉と長ねぎはせん切りにする。
- ボウルに鶏ひき肉、生姜、しその葉、酒、しょうゆ、片栗粉を入れてなめらかになるまでよくねる。一口大の団子状に丸める。
- 鶏ガラスープを熱し、2を入れて火を通す。塩で味をととのえる。
- 3を器に盛り、オリーブ油をぐるりと回しかける。長ねぎをあしらう。
疲れる=体力が消耗している時には「気を補う」ものを食べます。山芋類は薬用人参にも匹敵するといわれるほど滋養があります。すりおろして生で食べるだけでなく、揚げたり焼いたりして火を通すと、気を補う力が増すといわれています。

材料(2人分)
鶏肉……80g
長芋……150g
玉ねぎ……80g
しいたけ……2〜3枚
豆乳……200㎖
とけるチーズ……50g
白みそ……大さじ1
塩……適量
小麦粉……適量
片栗粉……小さじ1
サラダ油……適量
好みのハーブ……適宜
作り方
- 鶏肉に軽く塩を振り一口大に切る。長芋は一口大に切る。薄く小麦粉をはたく。
- 玉ねぎとしいたけは薄切りにする。
- 鍋にサラダ油適量を入れて中火で熱し、鶏肉の両面を焼いて取り出す。長芋も同じように焼いて取り出し、ともに耐熱皿に並べる。
- 鍋にサラダ油適量を入れて玉ねぎを炒める。しんなりしたらしいたけを加えてさらに炒める。豆乳を加えて、沸騰しないように熱する。
- 白みそをとき入れ、塩で味をととのえて、同量の水でといた片栗粉を加えてとろみが出るまで熱する。
- 3の上に5をかけ、チーズを振って、トースターで15分ほど焼き色がつくまで焼く。(仕上げにパセリやディルなど好みのハーブを振ってもよい。)
たこ、セロリ、きゅうりは体の熱をとり、とうもろこし、枝豆はむくみをとり体の水の流れを整える食材で、蒸し蒸しした日本の夏にぴったりの食材です。玉ねぎや香味野菜は「気」の流れを整えます。ゼリー寄せは、夏バテで食欲がない時にもおいしく食べられますよ。

材料(2人分)
たこ(ゆで)……60g
じゃがいも……50g
セロリ……20g
きゅうり……20g
玉ねぎ……20g
赤パプリカ……10g
枝豆……8個
ベビーコーン……2個
三つ葉など好みの香味野菜……適量
2番だし……200㎖
しょうゆ……小さじ1/2
塩……小さじ1/4
粉ゼラチン……4g
下準備
- じゃがいもは1cm角に切り、電子レンジにかける(600Wで1分)。
- 枝豆はゆでてさやから出す。
- たこと野菜を、1cm角のさいの目に切る
作り方
- だしにしょうゆと塩を入れ、軽く煮立ったら玉ねぎ、セロリ、きゅうり、赤パプリカ、ベビーコーンを入れる。
- 玉ねぎが透き通ったら、枝豆とじゃがいもを入れて一煮立ちする。
- 火を止めてたこを入れ、粉ゼラチンを振り入れてよく混ぜてとかしたら、冷蔵庫で固まるまで冷やす。
- 三つ葉など香味野菜をあしらう。
ナッツ類はアンチエイジング食材です。ふりかけにすることで、おにぎりにまぶしたり、パスタ、ラーメン、うどん、みそ汁、サラダ、チャーハンなど、何にでも一振りすることができます。
パクチーが苦手な時はパセリに変えても薬膳効果は同じです。

材料(作りやすい分量)
ピーナツ……30g(包丁でみじんに切る)
いり白ごま……30g(皮なし)
かぼちゃの種……10g
松の実……10g
おかか……7g
酒…… 大さじ1
ナンプラー…… 小さじ1
しょうゆ……小さじ1
上記材料をフライパンに入れ、弱火でぱらりとするまで煎る。
仕上げにお好みで下記のスパイスを加える。
クミン……小さじ1/2
ドライパクチー(パセリでも可)……適量
