【美容特集】グレイヘアという選択
白髪は染めるのが当然。そう思って染め続けていても、ふと、いつまで染め続けるか悩むときが来ます。「グレイヘア」ブームを作った編集者が、葛藤の中で白髪染めをやめるきっかけをつかむストーリーです。
編集者 依田邦代
1958年生まれ。出版社入社後、雑誌編集長を経て書籍編集者に。『グレイヘアという選択』(主婦の友社)などヒット作を多数手がける。
施術中、薬剤がしみて頭皮がピリピリと痛い。いつまで白髪染めを続ける?
まず、私自身のことをお話しすると、白髪が出始めた40代半ばから美容室で白髪染めを始めました。初めのうちは2カ月に一度程度でよかったのですが、10年後には3週間に一度、美容室に通うようになっていました。白髪の量が増えるにつれて、染めても染めてもすぐに根元に白髪が出てくるようになったからです。“染めて、ヘアカットして、次の予約を入れて”を3週間ごとに繰り返していたある日、「私は一生、これを続けるの?」という疑問が頭に浮かび、衝撃を受けました。
往復を入れて4時間、カット代を含め1万2000円、それを毎回費やし、何よりも施術中、薬剤がしみて頭皮がピリピリと痛くなり、その晩は就寝中に猛烈にかゆくなってかきむしってしまう、そんな苦行を、ずっと続けるの?
「白髪染めをやめたい!」と心から思いました。でも、「やめたらどうなる?」と想像すると怖くなります。ぐっと老けた私を見て、会社で仕事仲間はどう思うだろう? 友達は? 夫は? 子どもは? そして結局は「やっぱり染める以外ない」と委縮してしまうのです。
やめたい、でもやめられない、その葛藤に苦しみ、同じところを行ったり来たりしているうちに約3年がたちました。そんなあるとき、もしかしたら白髪染めをやめられるのでは? と思える出来事が。
「白髪→老ける→終わる」ではない
55歳のとき『OVER60 Street Snap』という60歳以上のおしゃれな女性たちのスナップ集を編集しました。年を重ねた女性たちが個性的なファッションを楽しみ、生き生きと笑う姿が評判を呼び、多くのメディアで注目されました。その後、パリ、ミラノマダム版も含めシリーズ化しましたが、あるときそれらの表紙の女性が全員白髪だと気づきました。中ページをめくってみると、そこにも大勢の白髪女性たちがほほえんでいました。それまで気づかなかったのが不思議です。
「白髪→老ける→終わる」という図式が私の頭の中にありましたが、その女性たちは決して終わっていませんでした。そのときわかったのです。白髪になり、そのままあきらめてしまえば老婆になるだけ。でも、そこでギアチェンジをして「素敵なマダム」になることは可能なのだ、と。考えてみると、男性には「ロマンスグレイ」と呼ばれる、素敵な白髪のおじさま枠があります。女性にだってあっていいはず。新しい言葉「グレイヘア」が誕生した瞬間です。私もそれを目指そう! 目標ができたことで、ようやく白髪染めをやめる決心がついたのです。
小桐明美さん(50歳)
グレイヘアになってからは「染めなくちゃ」という強迫観念から解放されて、ストレスフリーになりました。
福井秀代さん(60歳)
3年前に白髪染め卒業。「今ではスキンケアやメイクなどのおしゃれにエネルギーを使っています」。
立山智保子さん(48歳)
20代から白髪が目立つように。周りのすすめで1年半前にグレイヘアを選択。「心が軽くなりました」。
小金由香里さん(58歳)
「白髪染めで頭皮がかぶれ、1年前にやめました。これからは年齢なりのおしゃれを楽しみたい」。
つらい移行期をどう乗り切るか?
白髪染めをやめた直後にぶつかる「移行期問題」。染めていた髪と、生えてきた自分の髪の色が混在する時期の乗り切り方は、帽子やウイッグ、カラートリートメントを使ったり、ショートヘアにするなどいろいろある。