違いが分かると見方が変わる⁉流派の歴史と技法の違い~池坊編~
植物を美しく飾り鑑賞する日本発祥の芸術「華道」
そんな華道には流派がたくさんあることをみなさんはご存じでしょうか?実は華道にはとっても細かく分けると300以上の流派があるとも言われているんですよ。その中でも池坊(いけのぼう)という流派は1番はじめに作られたとされる流派でとても歴史のある流派となっています。
今回は池坊にフォーカスを当てて誕生から歴史・池坊の技法などをご紹介します!
華道の元祖!池坊の歴史とは?
池坊の歴史は飛鳥時代にまで遡り、聖徳太子が京都に頂法寺(六角堂)というお寺を創建したことから始まります。
ちなみに頂法寺の本堂の北側には聖徳太子が沐浴したと言われている池があるのですがその池のほとりに住んでいた頂法寺の僧侶は代々「池坊」と呼ばれていました。そしてこの名前が後に流派として呼ばれるようになったんですよ。
もともと飛鳥時代の仏教伝来により花を供えるという習慣が日本には長年あったのですが室町時代になると、より花を鑑賞するという意味合いが強まっていきました。そのきっかけとされるのが1462年、頂法寺の僧侶であった小野妹子の末裔と言われている池坊専慶(いけのぼうせんけい)が武士に招かれ花を生けたことからだとされています。
当時新たな建物の様式として書院造ができ始めたと同時に、海外から多くの芸術作品が渡ってきたことから家の中でも芸術を楽しむという文化が生まれていました。
そんな中で専慶はそれまでの仏様に花を供える形から花そのものの美しさを表現する形に変化させたのです。それが町の人々から評判になりここで「華道」という芸術が確立したとされています。
つまり池坊は華道を確立した1番最初の流派!
そのため他の流派では「~流」という言い方をしますが池坊だけは「~流」とは言わず池坊という名前だけなんですよ。こうして安土桃山時代・江戸時代には専慶のほか、専応や専栄、専好(初代)、専好(二代目)といった代々の僧侶が武士や朝廷の方々へ生け花を行い、池坊の地位を確立しました。
こうして池坊の人気は衰えることなく、書物によって世の中に華道の知識を広めると池坊に入門する人々は数万人に及んだとされています。
現代においても池坊は華道の3大流派の1つとされるほど人気で有名な流派となっており、歴史ある流派でありながら時代の流れに合わせた新たな技法を生み出すなど進化を続けています。
時代によって変わってきた⁉池坊の技法とは?
池坊の中には3種類の技法があります。
1.立花(りっか)
立花は華道の中でも1番最初に作られた技法で、その立花の中でも「立花正風体」と「立花新風体」の2つがあります。どちらも自然というのは1つだけで成り立つものではなく、木や草・花など様々なものが生きることによって出来ているという考え方が元となっていて花瓶1つで自然を表現することが大切とされています。
立花正風体では役枝という必ず生ける必要のある枝を「七九(しちく)の道具」と呼び
- 真(しん)
- 正真(しょうしん)
- 副(そえ)
- 請(うけ)
- 控(ひかえ)
- 流(ながし)
- 見越(みこし)
- 胴(どう)
- 前置(まえおき)
のうち胴・控を入れない7つの草木あるいは9つ全ての草木を生けるということが決まっています。
また左右はあえてアンバランスになるよう生けたり、きれいな草木や枯れかけている草木を使うなど自然の豊かさを表現することが見どころです。一方で立花が古くから飾られていた床の間が時代の変化とともになくなっていく中で1999年に新たな生活様式に馴染むよう作られたのが立花新風体です。
立花正風体よりも役枝の型にとらわれることなく、自然を表現できる新たな技法となりました。
2.生花(せいか)
生花は立花の後に出来た技法です。立花に比べて完成形が小さいため、手軽に生けられると人気になり女性が生け花を行うきっかけにもなった技法です。
生花にも「生花正風体」と「生花新風体」の2種類があります。どちらも草木の生命を大切にしており、少ない役枝で生命の誕生を表現することが大切です。
生花正風体では
- 真(しん)
- 副(そえ)
- 体(たい)
の3つの役枝を使うことが決まっています。
1977年には新たな生花の生け方として「生花新風体」が誕生。生花正風体よりも型にはまることなく草木の個性を出しながら表現することができるようになりました。
3.自由花(じゆうか)
自由花は名前の通り自由に生けることができます。立花や生花は主に床の間で飾られていたのですが時代の変化により日本の家はどんどん洋風化していきました。そんな時代変化の中で玄関や机の上でも飾れるようにと誕生したのが自由花です。
自分の感性で生けることができるほか、飾る場所によって表現を変えることができるため人気の技法となっています。
まとめ
今回は池坊の歴史や技法について執筆しましたが、それぞれの流派の特徴を知ることはすごく面白いです。
また1つ知識があるだけで今まで見ていた生け花もまた違った見方ができるためさらに生け花の奥深さに気づくことができますよ!
ぜひこの記事を読んだ後に生け花をご覧になってみてはいかがでしょうか?