「子育てをしながらもう一度子ども時代を楽しませてもらっている」|坂井真紀さんインタビュー【前編】
いつまでも少女のような透明感を持つ坂井真紀さんも、プライベートでは一児の母。映画やドラマでも多くの母親役を演じてきた坂井さんに子育てや仕事観の変化、介護や老いについても伺いました。今回の前編では子育てのお話を中心に紹介。
映画で演じた母と娘の関係 空白部分を想像して役作り
いま公開中の映画「MY(K)NIGHT マイ・ナイト」では、娘との関係がうまくいっていない病気の母親役を演じています。親子の繊細でヒリヒリするような表現が必要だったので、台本に書かれていない部分まで役について細かく考えました。娘が小さい頃母娘でどんな会話をして、どんな食卓だったのか、母親はどんなペースで働いていたのか…。正解はわからない中で想像しながら空白を埋めていく作業は、難しくもあり楽しいものでした。
私も家では一人娘がいる母親です。娘はいま小学6年生。41歳での出産はいろいろな面で不安でしたが、妊娠中はつわりもなく、分娩台に上がって40分で3600グラムの赤ちゃんをすぽっと産んでしまいました。高齢出産の枠に入りますが、だからこそ母親をできているのかなとも思います。自分の若いころは内面が本当に子どもでしたから、早くに産んでいる方々はすごいなと思います。子育てはすべてが初めてなので、小さなこと一つをとっても、どんな決断をすればいいのかと日々悩みます。娘が学校という社会に出たいまは、お友だち関係が一番心配ですね。ケンカをして帰ってくることもありますが、そんなときは「ケンカはお互い様だから、自分の悪かったかもしれない部分を考えてみてごらん」とアドバイスします。
子育ては全部が楽しいですね。私が小さいときはカエルやダンゴムシなんかを捕まえて遊びましたが、今は子育てしながら一緒に子ども時代をもう一度楽しませてもらっている感じです。成長するにつれて小憎たらしい部分も出てきましたが(笑)、まだまだ寝顔はかわいいし、子どもがいることで私も頑張れます。
私自身は3人兄妹の真ん中に生まれて、自由奔放な2人にはさまれたせいか、わりとまじめで心配性 な性格に育ちました。東京の根岸という下町らしい土地柄で、祖父母と両親とのにぎやかな7人所帯でした。いけないことをするとその瞬間に怒られる家で、ご飯ができてすぐに席につかないときや、お箸の持ち方などで怒られましたね。振り返ると、日常の中で良いこと悪いことを教えてもらっていたなと思います。何よりも、共働きの両親が愚痴も言わずに一生懸命働く背中を見せてくれたことが、一番の教えでした。今、母はうちの子どもを見てくれるんですが、一度も文句を口にしないんですよ。子どもがぐずっても「楽しかったよ」と言ってくれて。お母さんってこういう人だったんだ、すごいなと改めて知った部分がありますね。
娘がつくったお夕飯
メニューを決めるところから買い物まで全部一人でやってくれました。夕方に始めて完成は20時くらいでしたが(笑)。
愛用している湯たんぽ
寒い時期になると寝るときだけでなく、車の移動中やテレビを見ているときなどにもおなかにのせています。
Information
出演映画「MY (K)NIGHT マイ・ナイト」が全国公開中!
それぞれに事情を抱える3人の女性が、一夜かぎりの恋人=デートセラピストに救いを求める物語。夜の横浜を舞台に、切なくも儚い人間ドラマが繰り広げられます。坂井さんは、高校教師の娘に“婚約者”を紹介される、入院中の母親を演じています。
監督・脚本/中川龍太郎 出演/川村壱馬、RIKU、吉野北人、安達祐実、穂志もえか、夏子、織田梨沙、中山求一郎、松本妃代、坂井真紀、村上淳ほか 配給/松竹
坂井真紀さん
さかい・まき●女優。1970年生まれ。1992年に女優デビュー。数々の映画、テレビドラマ、舞台に出演。映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2008年)で日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。最近の出演作に、ドラマ「たそがれ優作」、映画「アナログ」「カラオケ行こ!」など。
●この記事は『めりぃさん』2023年12月10日発行号に掲載された内容を再編集しています