特集 メディケアー 消毒担当に聞く プロが教える家庭内消毒のワザ
福祉用具のレンタル事業を営むメディケアーでは、常に消毒に細心の注意を払っています。そんな消毒の専門家に、家庭でも応用できる技を聞きました。
おすすめの方法とやりがちなミスを、○×方式で楽しく学びましょう。
撮影/藤井優美子、中川晋弥 取材・文/圓岡志麻
宮内 英雄
(株)メディケアー PM本部 検査課 課長
レンタル福祉用具の消毒・清掃部門の責任者。お客様に安心を届ける、メディケアー事業のまさに中心的役割を担う。「“初心”を大切に、1つ1つていねいにクリーンアップしています」
重田 優美
(株)メディケアー 秦野事業所
直接お客様のお宅に伺い、福祉用具の点検や清掃を行うアフターサービスを担当。「利用者様の体調の変化などにも気を配りながら、福祉用具が常に万全に働くよう調整しています」
新型コロナウイルスの流行により、今やいわゆる3密の回避やマスク着用、手洗い・うがいの習慣は定着してきました。しかし目に見えないウイルスとの戦いが長期にわたる中、気のゆるみも心配なところ。とくに現在は家庭内感染による陽性者が増加傾向にあります。さらにこれからの季節は、同時流行が懸念されるインフルエンザや冬に患者が増えるノロウイルスにも注意が必要です。そこで、家庭内でできる対策をメディケアーの宮内さん、重田さんに伺いました。
「家庭内では、場所ごとにそれぞれ対策のポイントがあるので、ぜひチェックしてほしいですね。
例えば玄関はウイルスや菌の侵入を阻止する関所。他の場所より慎重な対策が望まれます。キッチンではノロウイルスへの対策も重要。主に料理をする人の手や食材から感染するので、料理前の手洗い、調理用具の消毒など、食前食後の対策が必須です。
スイッチ類などのよく触る場所もこまめな消毒が必要ですが、足腰の弱いお年寄りがテーブルの角を手すりがわりにするなど、思いがけない場所を日常的に触っているケースがあるので要注意。家族全員の視点でチェックすることが大事ですね。また消毒薬は、今回は万一口に入れても安心な塩素フリーのものを使用していますが、使う薬剤の使用上の注意をよく読んで必ず守ってください」
最後に、宮内さんから重要なアドバイスが。
「家庭内における消毒は、完璧にはできないと割り切ることも大事。神経質になりすぎて小言が増え、険悪なムードになったり、ストレスから免疫力が落ちたりしては本末転倒ですよね。目標は、持ち込むウイルスの数をできる限り少なくし、家の中で繁殖させないこと。そして感染対策をしっかりと続けることです。便利なグッズも使いながら、ポイントを絞って効果的に。習慣にしてしまえば、楽になっていきますよ」
宮内さん、重田さんの日常の仕事風景。1つ1つの作業がお客様の安全な生活に直結する重要な業務。
ウイルスの侵入口となる玄関。ここから先はウイルスを通さない意識でしっかり対策を。帰宅したらあちこち触れる前にまず手指を消毒。コートやバッグもスプレーなどで消毒を。買い物や宅配などの荷物はできればここで中身を出して消毒、不要な箱などは処分しましょう。
玄関に小さなゴミ箱を用意。ふたつきにするか、ゴミ袋の口を閉じてウイルス拡散防止を。マスクは紐部分を持って捨てましょう。
ドアノブは多くの人が触れる場所。側面や裏側なども見落とさず、消毒薬を含ませた布でまんべんなく拭いて。スプレーを直接吹きかけると、跳ね返ることがあるので避けましょう。
使用済みマスクの放置はNG!マスクにウイルスがついている場合、周囲に付着したり、飛散したりする可能性が。
抗菌・抗ウイルス効果のあるテープを貼れば、毎回、拭く必要がなくなり手間いらず。半年は効果が続くが、汚れたり破れたりしたら交換を。
口に入れるものを扱うキッチンは、細心の注意を払いたい場所。食材が直接触れるまな板や包丁はこまめに消毒して。また蛇口の継ぎ目、シンクの隅など汚れがたまりやすいところにはウイルスや雑菌も繁殖。面倒でも、すみずみまで清潔を保つことが大切です。
洗剤で汚れを落とした後、熱湯をゆっくりと、裏表まんべんなくかけて。消毒後は自然乾燥を。毎日行うと◎
消毒薬を使う場合は事前によく乾かすこと。濡れたままだと薬液の濃度が下がってしまい、消毒効果がなくなってしまいます。
調理中によく触る電子レンジや冷蔵庫などの取っ手類、また包丁の刃と柄の境目などは菌が付着しやすいため、抗菌テープやこまめな消毒で対策を。
汚れのたまりやすいトイレはウイルスや雑菌の温床になる危険が。壁や床にも飛散している可能性が高いため、こまめに拭き取りを。必ず手袋をし、消毒剤や拭き取りシートは場所によって使い分けましょう。壁→床、便器周囲→便器内と、汚れの少ない箇所から順に掃除を。
ウイルスや雑菌をタオルが媒介しないよう、個人で分けるか、ペーパータオルに切り換えたほうが安全。
水洗の勢いでウイルスや菌が飛散する恐れが。ふた裏も汚れるので、トイレ用シートなどで拭き取りを。
便器と床の境目は汚れがたまりやすいので念入りに拭き取り。消毒剤は素材を傷めないよう注意。銀イオンスプレー(P41)なら素材を選ばず使用できる。
家族が素足で歩きまわる床や、食事をとるテーブルも、しっかりと消毒を行いたい場所。ウイルスはホコリといっしょに舞い上がり、あちこちに付着するので、ホコリをしっかりと取る拭き掃除がポイントです。ホコリがたまりやすい部屋の隅なども念入りに。
いきなり濡れ雑巾で拭くと逆にホコリを塗り広げてしまうので注意。まずは乾いた布でホコリを取るのが鉄則。吸着力のあるお掃除シートもおすすめ。その後、消毒用スプレーを吹きかけ、自然乾燥を。
テーブルもまずはから拭きを。写真のようにS字を描きながら一方通行で拭き、ウイルスや菌を残さないように。床も同様にS字で拭く。
同じ箇所を何度もこすると、せっかく取った汚れが再び付着してしまい、効果がありません。
家族がよく触る場所も大事な消毒ポイント。リモコンやスイッチ類、部屋のドアなど、家の中を見渡して、一度、洗い出してみるとよいでしょう。気づいたとき、ちょこちょこと拭き取りできるよう、消毒剤も常備して。消毒を無理なく暮らしに取り入れていきましょう。
☆ こんなところが盲点
- スマートフォン
- リモコン
- スイッチ類
- ドアや窓の引き手
など
常に持ち歩き、指先で操作しているスマートフォン。取扱説明書を確認し、素材を傷めない消毒剤を布やシートにつけて消毒を。
テレビやエアコンなどのリモコンは、ボタン部分に汚れが付着しやすいので、抗菌・抗ウイルステープを貼りつけるのがおすすめ。
窓を開けるときはカギだけでなく、窓枠にも触っているはず。その他、よく触る場所は家の中に点在。確認しながら消毒を。
左. 消毒後、髪の毛を触る
中. 消毒した手を拭く
右. 消毒液を少ししか使わない
手指の消毒剤は、ポンプを完全に押し込んで出てくる量が適量。少なすぎると効果がありません。消毒用アルコールをつけた手は、自然に乾くまで何も触らないこと。また、髪は案外汚れているので、よく触るクセのある人は注意しましょう。
消毒だけでなく、手洗い・うがい・換気も正しい方法で続けましょう。手洗いは指の股や爪の間まで念入りに。うがいは帰宅後や食事前、掃除の後などに。換気は30分に1回が理想。例えば奥のベランダと玄関というように、できるだけ対角になる2箇所を開放して風を通します。
本誌「めりぃさん」の発行元「ては~とホールディングス」のグループ事業の中心である「メディケアー」は、車いすや介助機能つきベッドなど、福祉用具のレンタルを行っています。そして、その事業を支えているのが、商品の衛生、安心と安全に関する取り組みです。宮内さんに伺いました。
「お客様から回収したレンタル商品はまず、1つ1つ手作業でアルコール消毒します。なお感染症に罹患した方からの回収品は専用の消毒室を完備し、他の商品と区別して消毒しています。
次に、それぞれの素材に合わせオゾン殺菌や高温蒸気消毒など、機械による消毒を行います。このように二重の工程を設けることで、商品を破損などから守りながら、殺菌の精度を高め、安全性を向上させています。
最後に、高圧洗浄機で洗浄して、再び手作業により清掃。劣化した部品の交換や調整といったメンテナンスも行います。メンテナンスは利用者様の安全に直接関わる工程。そのため、小さなところも見逃さないよう、細心の注意を払っています。
また、これらの取り組みに加え、定期的に勉強会を開催し、知識の更新も欠かしません。安心を届けるために、日々努めています」