更年期を快適に過ごすカギはここにあった 骨盤底筋トレーニングと膣ケア
避けて通れない更年期。体だけでなく、心の不調に悩む人も少なくありません。
更年期を快適に過ごし、更年期後も人生を楽しむためのカギとなる「骨盤底筋トレーニングと膣ケア」について、植物療法士の森田敦子さんに教わりました。
撮影/川越裕介(森田先生)、中川晋弥(静物)
ヘア/霜村智之(marr) メイク/MIE
取材・文/田﨑佳子 イラスト/原田マサミ
森田 敦子
もりた・あつこ●植物療法士。大学卒業後、客室乗務員を経て植物療法を学ぶために渡仏。フランス国立パリ13大学で植物薬理学を学ぶ。植物療法専門校「ルボア フィトテラピースクール」主宰。著書に『枯れないからだ』(河出書房新社)、『自然ぐすり』(ワニブックス)など。
大きな体の変化や不調に見舞われる更年期。更年期とその後の人生を少しでも快適に健康に過ごすためには、どのような心構えや生活習慣が必要でしょうか。
フランスで植物療法と女性の性医学を学び、一人ひとりが自分の体と向き合うことの大切さを説き続けている森田敦子さん。森田さんは、女性ホルモンの減少する閉経後は「自分自身で女性性を育て、女性ホルモンを活性化していくステージに入る」といいます。
「人生100年時代といわれる今、生涯センシュアルであり続けることが大切だと確信しています。センシュアルとは、気持ちよさや心地よさ、何を好きと思うか、何に幸福を感じるか、五感をフルに使って感じ取る力のことです。好きな音楽を聴いて心おどらせたり、五感を満たす食事をしたり、誰かにときめいたり。自分を大切にし、心地よさを追求する、そんな時間を大切にしてほしいですね」
五感を磨くために必要なのが「最もセンシュアルな感覚器である膣まわりのケア」と森田さんは力説します。まだ日本では聞きなれない「膣まわりのケア」とは。
「女性ホルモンを活性化させるために効果があるのは、女性ホルモンの分泌とダイレクトに関係する、膣まわりのケアです。年齢を重ねても弾力と潤いのある膣を維持することは、どんな高級な美容液を使うよりもアンチエイジングに役立ちますよ」
「膣まわりのケアで、更年期以降の毎日が変わる」と森田さん。
「私たちの体は、膣まわり以外にも涙や鼻水、唾液など粘液がしっかり潤っていることで体を異物や細菌から守る働きをします。膣は特殊な粘液がでる部分であり、女性ホルモンを分泌させる子宮と深くつながっています。膣まわりが潤い、免疫力が高まればホルモンバランスが整って、イライラやうつ、冷えなどにも対抗できます。肌にもハリや弾力がでることはもちろんですが、粘液が出る体は、食事、運動、睡眠、ホルモン全てが整い、体の内側からのアンチエイジングにつながるのです」
美と健康に深くかかわるデリケートゾーンのケアこそが最高のアンチエイジンです
年齢を重ねた女性の膣まわりのトラブルで多いのが、頻尿・尿漏れと骨盤臓器脱(性器脱)です。これらの改善・予防には骨盤底筋トレーニングがおすすめです。
「頻尿や尿漏れは外出をためらい、家に閉じこもる原因にも。また、50代以上の女性に多い骨盤臓器脱(性器脱)は、膣から子宮、膀胱、直腸などの臓器が飛び出してしまう病気で、初期症状としては頻尿や残尿感、尿漏れ、便秘、残便感などが多いと言われています。その原因は一般的には経腟分娩と考えられていますが、座りっぱなしなどにより骨盤底筋が衰えることも一つの原因です。
子宮や膀胱、直腸などを支えている骨盤底筋のトレーニングを行うことで、他にも、性交痛の改善や便秘の解消など嬉しい効果が多数、報告されています。1日5分でいいので骨盤底筋トレーニングを習慣にしましょう」
骨盤底筋は尾骨から恥骨までをつなぐ筋肉。「内臓を支えるハンモック」とも言われ、子宮、膀胱、直腸を下から支えている。また、尿道や肛門を締める役割も担っている。
足を開いて立ち、膣をおへそに向かって引き上げるイメージで息を吐く。肺が縮んで横隔膜が上がるとともに骨盤底筋が引き上げられる。
息を吐いて3秒間キープしたら、吸いながら膣と全身をゆるめて元にもどす。「吐く・吸う」を何度かくり返す。
1日5分を目安に行う。
タオルを使うことで膣に意識を向けやすくした方法。縦半分に折ったフェイスタオルを棒状に巻き、椅子に置き、またがるように座る。息を吐きながら、タオルを持ち上げるイメージで膣をおへそに向かって引き上げる。3秒キープしたら、息を吸いながら元にもどす。