自分だけは大丈夫だと思っていませんか?看護師でも自分の乳がんに気づけないことがあるんです!
~プラチナエイジがかかりやすい病気、看護師の私が乳がんを体験して~
一時期、話題になった乳がんですが、いざ検診を受けるとなると「忙しい」「面倒くさい」「恥ずかしい」「怖い」などという気持ちが先に立って、ためらってしまう方も多いようです。でも、自分だけは大丈夫だという、その思い込みが取り返しのつかない事態を招くことも、ないとは言えません。実際に、そんな状況を私は体験してきました。私自身が、自分の乳がんにどのようにして気づいたのか、そしてどんな治療を受けたのか、お話ししましょう。
1、私はどうやって、自身の乳がんを発見したのか?
私は40代の頃、乳腺炎で「乳がん検診」を受けたことがありましたが、結果は「異常なし」だったので、その後ずっと検診を受けずに放置していました。「私が、がんになんてなるわけがない」という何の根拠もない思いこみが、どこかにあったのだと思います。
年が明ければ私も50代、暮れも押し迫った12月のある日のこと。入浴の後、何気なしに、ふと自分の左胸に触れた瞬間・・・「何だろう、これ・・・?」固くてはっきりとした、直径2㎝くらいのしこりの感触が伝わってきました。
私は看護師ですが、乳がんは専門外。さほど詳しい知識があるわけではありません。それでも「これはただ事ではない」と直感しました。よほど動揺していたのでしょう。ふと我に返ると、私は1時間ほど、その場に立ちすくんでいたようです。「何とかしなければ、しっかりしなければ」という思いと、「死ぬかもしれない、だめかもしれない」という思いが、堂々巡りしたまま、私の中でせめぎ合っていたのでした。
2、どんな風に受診し、どんな風に告知を受けたのか?その時の思いとは?
次の日、多少冷静さを取り戻した私は、乳がん専門の病院を受診することにしました。経験の豊富な医師は、触れただけで、それが乳がんなのかどうか、かなり正確に判断できるようです。
担当医は、触れた瞬間、表情を硬くして「急いで生検(疑わしい病変の一部を切り取って詳しく調べて病気の診断を行うもの)しましょう」とおっしゃいました。そして、数日後、再び受診した私を前にして、こう告げたのです。「ステージⅡの乳がんです。」
私は意外にも落ち着いていました。今思えば、自身が独り身であり、頼る人が誰もいなかったことで、気持ちが張り詰めていたのだと思います。
落ち着かざるを得なかったというのが、正しい表現だったのかもしれませんね。ただ、診察を終えて車に乗り込んで、まわりに誰も居なくなったと思った瞬間、初めて一筋の涙が頬をつたっていきました。
その後、どうやって帰宅したのか、ほとんど覚えていません。ただ、「どうして私が?」と自問自答し続けていたことだけは、覚えています。まるで、たった一人で深い闇をさまよい続け、答えのない答えを探し求めるように・・・。
3、乳がんの手術の実際とは?
手術は告知を受けた約1か月後に行われました。入院期間は3泊4日で、費用は20万円ほど。ありがたいことに、乳房を温存することができました。
もしリンパ節を採取して転移がみつかれば、さらに広い範囲を除去する可能性もあると言われていたので、温存できたことは本当に嬉しかったですね。
ただ、手術の前に悩んだのは、自身の高齢の母親に乳がんであることを告知すべきかどうかということです。結局、あえて事前には告げず、病状が落ち着いてから話をするという結論を下したのですが、のちに話をしたところ、母親はオロオロして泣きだしてしまうほど取り乱したので、この決断は正解でした。
母親に事前に伝えなかったことで、私は、付き添いもなく一人きりで手術を受けることになりましたが、特に不自由なことはありませんでした。手術が終わった後、ほどなくして動くことが可能になり、トイレにも一人で行けましたし、痛みもほとんどなかったので、しいて不自由だったことを挙げるとすれば、少しだけ心細かったことくらいです。
ただ、切除部位が広範囲である場合は、術後に動けなかったり、痛みが強かったりするケースもあるようですので、そのような場合は、一人で入院生活を送るのは、やはり困難かもしれません。
4、病気になった私を励まし続けてくれた看護師の同僚。数年後、彼女が同じ乳がんに
実は私を励まし続けてくれた看護師の同僚が、この数年後、私と同じ乳がんに侵されるという悲劇に見舞われました。
何人もの乳がんの患者さんの看護を行い、知識も経験も豊富だった彼女自身が、乳がんになったという事実、そして、かなり進行するまで気づかなかったという事実に、本人はもちろん、私自身も大きなショックを受けました。幸い、今は元気に職場に復帰していますが、今回のことで彼女なりに、いろいろと思うことがあったようです。のちに、こんな風に話してくれました。
「仕事の忙しさを言い訳に、自分の体調管理を完全に怠っていた。体調が悪いと思っても、年のせい、甘えだと逆に自分を叱咤激励していた。あなたに、偉そうにアドバイスしていたのに、本当に情けない。気づいた時には、もうダメだと思って、目の前が真っ暗になったよ。」
残念ながら、彼女は片方の乳房を失いました。しかし、現在はこの経験を活かして、乳がんの患者様としっかりと向き合い、看護師としてより高みを目指して頑張っています。その姿は、以前よりも、より一層、光り輝いて見えます。
まとめ|仕事熱心で責任感の強いあなただからこそ、ぜひ検診を
自分だけは大丈夫だという思い込みが、大変な事態につながるということをご理解いただけたでしょうか。
発見が早ければ早いほど、体への負担も費用の負担も少なくて済みますし、乳房を切り取らねばならないリスクも格段に減ります。仕事熱心で責任感の強いプラチナエイジの皆さんだからこそ、ためらっているなら、ぜひ検診を受けていただきたいと思います。そして定期的に自身の胸に触れて、自己検診を行うことを心がけるようにしましょう。
あなた自身の幸せのために、いますぐ、その大切な一歩を踏み出してください。