暮らしを楽しむ
楽しく・無理をせず日々の暮らしを楽しむ
マインドと工夫が上手な3人を紹介します。
『日々、小さく
積み重ねていくことで
わが家はできている』
futabaさん
金沢市内で8年間、古道具や器を扱う店を営んでいたほど、ものが好きなfutabaさん。ものから得られる幸福感もじゅうぶんに知っているし、料理やアイロンがけなど、ちょっと苦手だなと感じる家事では、お気に入りの力を借りることにして、ひとつひとつ命あるものなので家具はもちろん、生活道具や食材のストックに至るまで、ときどき見直しては取捨選択。扱いきれない、不幸なものが現れないようにしている。
映画や本、アートに写真、自然など、いろいろなものを見たり、ふれたりする蓄積によって、センスが身につき、インテリアとして反映されるもの。家事もまた同様に、小さな積み重ねがものをいい、家事のルーティーンはまさに積み重ねの連続であり、その結果が自分たちらしい家になって現れるそうです。
「今はこの形におさまっていますが、住まいや生活のスタイル、嗜好の変化、さまざまな要因によって暮らし方はどんどん変化していきます。それによって家事の方法を見直すべきところが出てきたら、そのつど柔軟に変えていく勇気ももちたいと感じています」
『一日で考えないで、一週間、
十日間で振り返ったら、
がんばったこと、うまく
やれたことって
きっとあるから』
山本ふみこさん(随筆家/主婦)
「私にとっては仕事も、部屋を片づけたり料理をしたりする家事も、どれもが同じくらい大切。仕事ができていても、家事がおろそかでは私の中ではアウトなんです。
小さいときからおままごとが大好きで、今もその延長線上に、価値を感じます。家は自分でつくった自分の居場所。仕事は、誰かとコミュニケーションをとったり、叱られたりすることもあるけれど、家事は自由にできるでしょ、私は家族のためというよりも、自分のために家事をしているんだと思います。
人によっては、片づけていても掃除をしてなくちゃ意味ないでしょ、って思いますよね。でも、私の場合は片づいているほうを見つめたいし、自分に甘いのね。自分流の抜け道があるんです。それなりに片づいていて、家族のおなかが満足していたらそれでいいって思っています」
うん、でも「楽しい」は「大変」でもある。気楽にいきたいけれど、そのなかに「大変」があるのは仕事と同じ。本当に楽しめなかったらやめなよ、って自分にもしょっちゅう言い聞かせていることです。大変なのはあたりまえで、だからこそ楽しいのよね。私、自分の楽しみのすべては家の中にある気がしているんです。だから、小豆を炊いているだけでも本当に幸せです」
『気持ちの晴れ間に家事をする。
雨が降ったら、
おやすみでいい』
石川博子さん(ショップオ―ナ―)
結婚歴35年、自営業歴35年。
結婚と「ファーマーズテーブル」をオープンさせたタイミングがほぼ同時期だった石川博子さん。現在もなお、お店を営みながら、日々はつらつと過ごす、その生活の根底にある家事を、どのようにとらえているのでしょうか。
「元気なときはどんな家事も楽しめますが、しんどいときは無理をしない。〝しなくては〟と、勝手に自分に課していた負担を省いてみると、自然と気持ちも晴れていくものです。
炊事も洗濯も掃除も、より自分の好きなようにやれるようになりました。昔は、主人や娘の好物の一つや二つつくってあげないと、と楽しみの指針が自分にないこともあったりしましたが、今は自然と自分を喜ばせることができるようになって。時の賜物なのか、ずうずうしくなっただけのことなのか(笑)。
3年ほど前から、主人が朝ごはんをつくってくれるようになったのも大きな変化です。人がやってくれるって、こんなにうれしいことなんだとか、逆に主人はいつも〝おいしい〟と言ってくれるなぁとか、家事で気づく幸せってあるものですね。私にとって、家は英気を養うところ。今日もがんばろうと思えるような場をつくるための家事でいい。皆それぞれの家事があるのだと思います」
撮影/清水洋、衛藤キヨコ 取材・文/藤沢あかり 編集協力/多田千里 *この記事は書籍から抜粋したものです。