【婦人科医監修】幸年期になるために知っておきたい10のこと
心身ともに変化を感じやすい更年期。上手に乗り切る方法を知っておけば、
おそれることはありません。ハッピーな”幸”年期を過ごすために、10のヒントをご紹介します。
幸せな更年期を過ごすには完璧を手放して自分に優しく
つらい、しんどいイメージばかりが先行する更年期。しかし、セルフケアや医療など、今ある症状をラクにする方法はたくさんあります。
「更年期症状は閉経前後の約10年間、女性ホルモンの急変動によって起こります。このホルモンの乱れは、女性なら誰にでも起こるもの。それ以外に環境や性格が影響している可能性があります」と話すのは、婦人科医の松村圭子先生。そのため更年期症状には、個人差があるそうです。
「更年期症状は、自律神経のコントロールが効かなくなることで現れます。例えば、職場で責任の重い仕事が多く、家庭では夫や子ども、親のことで心配事が続くといった心身を酷使するような環境にいると、自律神経が乱れやすくなります。また、『こうでなければ』という完璧主義やネガティブ過ぎる性格も自律神経を乱れさせ、拍車をかける原因となります」
更年期を〝幸〟年期にするためには、自律神経をいたわり、ストレスをためない生活がカギになるそう。
「セルフケアを実践しても体調が優れない人は、我慢せずに医療に頼りましょう。また、『もう年だから』と思わずに、何でもチャレンジするポジティブな心も大切。40代・50代が〝幸〟年期になれば、その先の人生がもっと楽しくなりますよ」
更年期に起こることを事前に知る
女性ホルモン変動の仕組みや症状がわからないままだと、漠然とした不安につながります。まずは更年期に起こる体の変化を知っておくと安心です。
①更年期の始まり
周期や日数などが乱れ生理に変化が起こり始める
更年期の始まりのサインは、生理不順と心身の変化が挙げられます。45歳を過ぎて生理の間隔が空いてきた、または1~2日で生理が終わるなどといった変化が目安。反対に生理が変わらず順調ならば、まだ更年期の時期には入っていないでしょう。
②更年期の症状
ホットフラッシュ、疲れ、不眠など症状は100以上
更年期の症状は、疲労感や肩こり、頭痛、ホットフラッシュ、不眠の他、イライラや気分の落ち込みといったメンタル不調まで、100種類以上にのぼります。日常生活に支障を及ぼすほどつらい場合は「更年期障害」といいますが、更年期の人が全員、症状が重いというわけではありません。
自律神経を乱れさせない生活をする
更年期の症状を防ぎ、悪化させないためには、自律神経を乱れさせない生活が欠かせません。食事・睡眠・運動の3つを整えることが症状改善の基礎になります。
③食事
朝食で体内時計をリセット
自律神経を整える
不規則な生活は自律神経を乱れやすくさせます。一日の始まりとなる朝は、決まった時間に起きて朝食をとりましょう。すると人間に備わった体内時計がリセットされます。体が目覚めて活動スイッチが入ることで、自然と自律神経が整います。
④睡眠
睡眠不足は症状の悪化に
夜はリラックスして過ごす
人は睡眠中にさまざまな機能を回復しています。そのため睡眠不足になると、自律神経のバランスが乱れやすくなり更年期症状が悪化。夜はネガティブなことを考えずにリラックスして、スムーズに入眠を。睡眠時間は7~8時間を確保しましょう。
⑤運動
自然な眠りのために適度に体を動かす習慣を
スムーズに入眠するには体がほどよく疲れている状態が理想的。生活の中で適度に体を動かす習慣をつくることで、夜になると自然と眠くなるサイクルが生まれます。運動が苦手なら無理をしなくてもOK。散歩や家事でこまめに体を動かしましょう。
ストレスを“ためない”“避ける”生活をする
ストレスがたまると心身の不調が強く現れる傾向にあります。更年期世代は、嫌なことから距離を置いて、自分を甘やかしてあげましょう。
⑥メンタルケア
頑張り過ぎをやめて発散できる方法を持つ
更年期世代は、ラクをしてがんばらないことが大切。一人の時間を過ごす、趣味を見つけて没頭するなど、自分なりのストレス発散法を持ちましょう。ただし症状がつらいなら無理をせず、ゆっくり休息を。
⑦家族との関係
心身の変化について家族に伝え理解を得る
抱えていた荷を、徐々におろしていくのが更年期。家族優先で過ごしてきた人は、「これまでの体と違う」ことを伝え、理解してもらいましょう。体がつらいときは頑張らず、周りの力を借りられる環境づくりを。
⑧人付き合い
人間関係を見直してストレスを最小限に
大きなストレスになるのが人間関係です。更年期を上手に乗り切るために、これからは必要のない人付き合いを見直して、自分が必要とする人との時間を大切にしましょう。ストレスが半減して、人生の後半がさらに充実します。
治療法があることを知っておく
ホルモン補充療法、漢方薬、プラセンタ療法など、更年期障害に対しての治療法は確立されています。「つらいときは医療に頼る」という選択肢があることを忘れずに。
⑨ホルモン補充療法
エストロゲンを補う治療で代表的な症状を緩和
ホルモン補充療法とは、足りなくなった女性ホルモンのエストロゲンを補う治療法。貼り薬や飲み薬でごく少量を安全に補充できます。特にホットフラッシュや動悸などに効果的で、即効性があるといわれています。
⑩漢方薬
体質に合った漢方治療で心身のバランスを整える
更年期障害の治療には漢方薬もあります。漢方薬は、今ある症状の他に、体質や性格、症状の現れ方などを診て処方されます。ホルモン補充療法よりは効果が緩やかですが、心身のバランスを整えて症状改善に導きます。
松村 圭子先生より
「40代・50代女性は甲状腺の病気にも注意」
疲れやすい、だるい、むくみがひどいといった症状には、甲状腺疾患が潜んでいる場合も。40~50代女性に多い甲状腺機能低下症は、更年期障害との区別が難しいので、「おかしい」と思ったら、婦人科を受診することをおすすめします。気軽に相談できるパートナードクターがいると安心ですよ。
松村 圭子先生
成城松村クリニック院長。日本産科婦人科学会専門医。若年層の月経不調から更年期トラブルまでサポート。世代問わず、女性が安心して相談できる医師として患者からの信頼を得ている。
イラスト/植松しんこ 構成・文/釼持陽子