知っておきたい『福祉用具のHOW TO1』
いつか使うことになるかもしれない福祉用具。
レンタルを利用するのが便利といいますが、いったい
どのようなサービスなのでしょうか。福祉用具レンタルの
老舗である「メディケアー」のスタッフに聞きました。
撮影/松本 健 取材・文/沼田美樹
吉田 遥さん
(株)メディケアー
三浦事務所
2016年入社。福祉用具専門相談員、アフターサービス専門スタッフ。「福祉用具をお使いになる方の意志を尊重しつつ、ご本人とご家族の皆さまが『自分らしく』生きるお手伝いをできれば幸いです」
加藤侑也さん
(株)メディケアー
新横浜事業所
主任
2013年入社。福祉用具プランナー、福祉用具専門相談員、かながわ介護予防・健康づくり運動指導員。「利用者さまとご家族が快適に生活できること、笑顔を増やすことを目指して、サポートします」
―まずは、福祉用具のレンタルの仕組みについて簡単に教えてください。
加藤 日常の生活動作や移動を補助する用具が必要となった場合に、当社メディケアーのような、福祉用具のレンタルを専門とする事業所で必要な物をお貸し出ししています。要介護認定がある場合は介護保険を使うこともできますが、その際はまず市区町村に申請していただく必要があります。介護保険を使わず自費で借りることも、もちろん可能です。ケースバイケースなので、まずは自治体にある地域包括支援センターにご相談いただくのがいいですね。
吉田 福祉用具がレンタルできることを知らずに購入される方もいらっしゃいます。使用期間や使う用具によってはレンタルの方がメリットが大きい場合もあります。長く使う可能性があるときは特に、焦らずよく検討することをご提案しています。
加藤 レンタルすることが決まったら、相談員がご自宅に伺い、お住まいの環境とご本人の症状や状態を確認し、ご希望を伺いつつその方に合った物をご提案します。サイズや使い心地などを確かめながら、利用者さまの生活がスムーズになるようアドバイスをしています。
―福祉用具、と一言でくくりますが、いろいろなツールがありますね。
加藤 はい。杖のような小さな物から組み立てが必要な物まで、さまざまです。利用者さまの症状やご自宅の状況に合わせて、その時々に必要な用具をそろえることが大事です。
吉田 同じ用途の用具でも、機能が少しずつ違ったり、サイズの調整が必要だったりと、快適に使うためには細かなケアが必要です。
―そこを、お二人のような専門相談員がサポートしてくれるのですね。
加藤 はい、メディケアーには「福祉用具に関するさまざまな資格を持ったスタッフ」がおり、ご家族の状況やご本人の希望を聞きながら一人一人に合う用具をご提案しています。
吉田 用具の選び方一つで、毎日のちょっとした動作が楽になったり、それによって気持ちが前向きになることもあります。逆に、ちょっとでも合わない物を使うと、動くのがおっくうになって出掛けるのを控えたりと、生活に制限ができてしまうので、そこはとても慎重に選定するように心掛けています。
加藤 慣れない用具ですので、使い始めてから不具合が生じることがあります。最初はいいと思っても毎日使ううちに「もう少しこうだったらいいのに」と思うことも。そんなときは、スタッフが出向いて微調整したり、場合によっては別の用具をご提案することもあります。
吉田 利用者さまの中には、できるだけ環境を変えたくない、という方もいらっしゃいます。そういうときは、ご自宅にある物に機能を追加するような用具をご提案することもできます。布団から起き上がるときの補助用具や、トイレに設置する手すりなど、大きな工事を必要としない用具なら手軽に導入できますよ。
加藤 「普段どおり」に生活できるということが、何よりのストレス軽減になります。ただ単に症状や体にフィットするということ以外に、利用者さまの気持ちも考えた上で、何が必要かをご提案するのも、われわれ福祉用具専門相談員の仕事です。
―具体的に、福祉用具を使うことで利用者さまの生活が改善された事例はありますか?
加藤 外出先で転倒したことで家にこもりがちになったという方がいらっしゃいました。転んだことがトラウマになってしまったんでしょうね。足の機能に支障があるというより、どちらかというと気持ちの問題だと思ったので、かわいらしい花柄の椅子付き歩行器をご提案しました。そうしたら、買い物が楽しくなって出掛ける機会が増え、ご家族との関係も良くなったとおっしゃっていただきました。
―花柄は、なかなかのチャレンジだったのでは?
加藤 レンタルならではのチョイスかもしれませんね。買うには躊躇するけれど、レンタルなら思い切って使える。それで気分良く外出ができたら、すてきじゃないですか?
―確かに、買うとなると、長く使えるかどうかとか、状況が変わったときにどうするかとか、そういうことが気になってなかなか選べないこともありますよね。
加藤 症状や状況は日々変わっていきます。用具を選ぶ際には、そうした日々の変化に対応していくことも大切です。体調の変化や身長・体重などの増減で、サイズの変化などのニーズがありますから。
吉田 大事なのは、ご本人の運動能力を上手に使って、少しでも自力で動けるようサポートすることだと私は思っています。「自分の力でやっている」と実感することで、もう一歩踏み出すことができる。そうやって少しずつ暮らしが楽しくなったら嬉しいですね。
―今はまだ差し迫った問題ではないという方も、いざというときに備えて、いろいろ情報を集めておいた方が良いでしょうか。
加藤 ご家族や自分自身が必要となったときに慌てずに合った物を選べるように、レンタルの仕組みや価格、保険のことなどは一通り知っておくと安心だと思います。
吉田 利用される方とご家族のご希望に寄り添えるよう、私たちも全力でお手伝いします!
介護保険制度を利用してレンタルできる福祉用具は、車いすや介護ベッドなど全部で13種類あります。ただし、種目ごとに適用基準が設けられており、介護度によって借りられる物が異なるので、レンタルサービスを利用する際は前もって確認することをお勧めします。詳細は厚生労働省のホームページなどでご確認いただけます。
はい。その場合は全額自費でのレンタルとなります。
福祉用具のレンタルを専門に行う会社には、「福祉用具専門相談員」という資格を持ったスタッフが常駐しています。体の状態や、使用場所の状況を相談しながら選べるので安心です。長い目で見ると費用面でもメリットがあることも多いので、まずは相談してみてください。
お母さまが歩くのが困難になり、車いすが必要だと娘さんがインターネットで購入されたそうです。すぐに届いて便利だと思ったそうですが、実際使ってみるとお母さまの体格に合わず、結局レンタルサービスを利用することになったとか。
車いすにはいろいろなタイプがあり、重さや機能もそれぞれ異なります。まずは専門家に聞いて、利用する方に合ったモデルをきちんと用意することが、心と体の健康のためになります。購入を検討する前に、まずはプロの意見を聞いてみると良いでしょう。