硬くなった体をほぐして軽快に! 福祉用具を使って体力づくり
撮影/松本 健 構成・文/峯島由衣
私たちの体は動かさないと鈍る一方。とはいえ激しい運動はためらわれてしまうもの。
そこで今回、家にいながら、かつ家にあるもので代用して行える、超簡単な運動をご紹介します。
小薄優香さん
おすき・ゆか●トレーナー歴12年。be awake所属の健康運動指導士。
「介護予防体操のほか、なぜ運動が必要なのか、を伝えていくことも大事な役割だと思っています」
原田大輔
株式会社メディケアー
2014年入社。福祉用具専門相談員。「利用者さまが今何を必要としているかを見極めて、しっかりと裏付けのある提案ができるよう、日々知識を蓄えています」
梅雨の時季はなかなか散歩にも行けず、運動不足に陥りやすいときでもあります。
「ほんの少しでも家の中でできる運動で体力づくりをしておけば、いざ外出!となったときに、体を軽快に動かすことができます」と話すのは、健康運動指導士の資格を持つトレーナーの小薄優香さん。
「運動習慣のない高齢者の方は、普段の生活で利用している福祉用具や家具をサポートアイテムにしてできる簡単な運動で十分です。意識するのは、肩甲骨、骨盤、股関節。これらが正しく動き、正しい位置に整うだけで、少しの動きでも多くの筋肉を使える体になります。大切なのは、毎日続けること! 5回×1セットを目安に、自分のペースで始めてみてくださいね」
やり方
椅子に浅く座り、杖を逆手で握った状態で両腕を前に出す。その位置から、へその前に杖を引き寄せる。このとき、胸が開いていること、背筋が伸びていることを意識して。
効果
ひじを曲げ、腕を引くことで肩甲骨が動き、猫背の解消に。呼吸もしやすくなる。
注意点
杖を引き寄せるときはただひじを曲げるのではなく、肩甲骨を寄せるイメージで!
やり方
順手で杖を握り、背筋を伸ばして椅子に座る。そのままゆっくりと上半身をひねり、限界点が来たらゆっくり戻す。反対側も同じように繰り返す。
効果
腰からひねることで体のバランスを取る動きを習得し、歩行時のフラつきを予防。
注意点
無理にひねりすぎると腰痛の原因になることも。
やり方
片手で手すりを持ち、ベッドに腰掛けて上体を前に倒す。その姿勢を保ちながら、腰を浮かせる。その勢いで立ち上がる。立てない人は、前かがみ↔元に戻す、を繰り返す。
効果
自力での立ち上がりをサポート。尻もちで起きる圧迫骨折の防止に。
注意点
立つためだからと腕に力を入れすぎると、腕のケガを招くことも。
やり方
両手で手すりをつかみ、脚を前後に開いて立つ。前に出した脚のひざを90度に曲げるイメージで中腰姿勢に。限界点に達したら、元の位置に戻す。
効果
太ももに筋肉がつき、股関節も柔らかく。立ち上がりのフラつき防止に。
注意点
足がつらないよう、やり始めは、脚の前後開脚は狭め、中腰は浅めから。
やり方
片手で手すりを持ち、綱渡りのように一直線上を歩く。歩く際は前の足のかかとにつま先を付けて。視線は真っすぐ前を見て、上体がゆらゆらと動かないように意識する。
効果
バランス感覚が養われ、自力歩行の改善や歩行中のフラつき予防に。
注意点
体が安定しないと手すりを頼ることになるので、手すりの固定はしっかりと!
やり方
片手で手すりを持ち、直立。そこからひざを太ももの付け根あたりの位置まで高く上げ、ゆっくり下ろす。高く上がらない人は低い位置からスタートして。
効果
股関節が柔らかくなり、歩くときの一歩が出しやすくなる。つまずき防止にも。
注意点
脚を高く上げると呼吸が早くなるので、無理のないペースで行うこと。
やり方
両手で手すりを持ち、背伸びをするようにかかとを上げる。慣れてきたらひざを伸ばし、脚と背筋が一直線になるように意識しながら行う。
効果
ふくらはぎの筋力がつくことで血流がよくなり、脚のむくみや冷え改善につながる。
注意点
つま先立ちになるときは足首をたくさん動かすので、やりすぎて痛めないように。