【輝く人のON/OFF】ハーブ料理コンシェルジュ・小早川愛さん
撮影/楠 聖子 取材・文/新里陽子
ハーブ料理コンシェルジュ
小早川 愛 さん
歳を重ねるごとに、キラキラと輝いている女性がいます。
社会で活躍する「ON」の場面と、自分自身の時間を大切にする「OFF」の場面があるからこそ放たれる輝き。
今回はハーブ料理コンシェルジュの小早川 愛さんに、これまで歩んできた道筋や、2つの場面で大切にしていることを伺いました。
仕事と家庭のバランスが変わった4回の転機が今につながっています
「ハーブ料理コンシェルジュ」。
聞きなれない言葉ですが、それもそのはず。小早川さんが自分自身で考案して活動を始めた、この世で唯一無二の肩書きです。この肩書きを名乗るまでには、さまざまな場面で自分と向き合いながら、マイスタイルを確立してきました。大学卒業後は得意な語学を生かして大手映画配給会社へ就職。そして、担当した映画が事前の評判を覆すほどの大ヒット。32歳で部長職に就任と華々しい功績を残します。
映画配給会社時代。若くして初の女性部長職となり、世の中からも注目され、雑誌でも小早川さんの特集を組まれるほどに。
長期出張もこなす職業をストップ。働くママの卒業を決意
仕事に邁進しながらも、3人のお子さんを育て4人目を妊娠していた小早川さん。フランスへ2週間の出張時、お子さんの1人が突発性の大病を患います。「無事回復しましたが、そのときから仕事の向き合い方が変わり、お母さん業に専念しようと決めました」と当時を振り返ります。
専業主婦になり充実した日々を送る半面、家庭のみの毎日に少し気持ちが不安定だったこともあったと振り返ります。近くの図書館通いが、社会とのつながりだったとか。
ホームパーティで料理に目覚め、ママ友の言葉で社会復帰を決意
お子さんたちが小さいこともあり、ママ友を呼んでのホームパーティが楽しみの場に。サーモンマリネ、チキンのオーブン焼きなど、子どもをおんぶしながらでもできる時短料理作りに開眼。そのおいしさにママ友からも「おいしいからまた作って」「教えて」とうれしい言葉をもらったそう。「自分が作ったものを喜んでもらえることがとても幸せでした。この経験が今の活動をするきっかけにもなっています」。
始めたパートはハーブ農場の経理事務
子どもたちが成長し、ハローワークで職探しをスタート。このパート先が、まさに小早川さんの運命を変える〝ハーブ〟を扱う会社でした。経理事務をする小早川さんの目に飛び込んでくるのは、伝票に書かれた「バジル」「ミント」などのハーブの名前。
そして、上司からも「このハーブで何か作ってみてね」と生ハーブをもらう機会が訪れます。ならば、と自宅のキッチンで、ネットや本を参考にしながら自分なりのレシピを考え、毎回その料理の写真を撮り、上司に報告書として提出したそう。「そこまで頼まれてはいなかったんですが、作り続ける情熱がすごいと褒められ、とてもうれしい気持ちになりました」。
ハローワークで探した職場は、自宅近くであることが条件。出合えた勤務先が、埼玉県で広大な面積を持つハーブ農園。生のハーブに触れる機会も多くハーブへの探求心がますますわき、勉強の場ともなりました。
このことをきっかけに、商談用の企画書や自作のハーブ料理レシピなどをまとめるようになります。少しでも役立ちたい、ハーブをもっと知りたい、という気持ちが小早川さん自身を動かしました。そして「ハーブ料理コンシェルジュになる!」と決意。
パート業務とは別に個人の活動として、ハーブのよさを伝え、ハードルを低くしてたくさんの人に食べてもらう活動をスタートさせます。今ではSNS発信を皮切りに、雑誌やテレビ出演、企業のレシピ開発や社会人大学の講師と、目まぐるしく活動の場を広げています。「毎日ハーブを食べていたら、長年悩みだった冷え性も克服。ハーブパワーが自分を支えてくれていると思っています」。今は、ハーブの芽がたくさん息吹く春の訪れが楽しみなのだそうです。
「ハーブ料理コンシェルジュ」として活動。ハーブ料理教室では、たくさんの人たちに「上手にハーブを取り入れたい」という言葉をもらい、「かつての私と同じような感動をみなさんに感じてもらいたいです」と日々奮闘中。
専業主婦だった小早川さんが、ハーブ料理コンシェルジュとして活躍し、念願だったマツコデラックスさんの情報番組にハーブの達人として出演するまで、その間約1年。いったいどうやってその夢を実現させたのかとても気になりますが、小早川さんならではの「大切にしていること」があっての功績なのがわかります。
一つは、溢れる情熱です。「パート先の業務の一環として、スーパーなどにハーブ商品を置いていただけないか新規の商談なども担当しています。忙しい中、時間を割いてもらうのですから、わかりやすいように資料は万全に用意し、実物の商品もお持ちします」。商談は決してうまくいくことばかりではなく、落ち込むことも多々あるそうですが「それでも、またお話を聞いていただける機会があったときにはもっと魅力を伝えるにはどうしたらよいか、を考えるようにしています」。電話口で初めて商談のお願いをするときも、短時間でわかりやすく、そして熱意をもってお話しすることを心掛けているそうです。その結果、これまで取り引きがなかったところとつながれるようになるなど、確実に小早川さんは世の中のハーブ市場を動かすひとりとなっていました。
もう一つは、夢を夢として終わらせず、奮い立たせる言葉を自分に投げかけること。「例えば、マツコさんの番組に出たいな、ではなく、〇月の回に出演する、とノートに書いてしまいます。ノート上で既成事実になってしまった以上、そこに向けて今から何をしたらよいかがクリアに。後は迷わず進むのみです」。
SNS発信、人脈を広げるなど、コツコツとできることから積み重ね、テレビ出演を実現させました。
広大な敷地にハーブがたくさん。ビニールハウスの中もハーブの香りに包まれ、立つだけで癒される場所です。
今年、さらに社会人大学の講師としてハーブ活用方法を教える立場につくことに。いろいろと勉強を重ねる中で、従来のハーブは「おしゃれで余裕がある人が使うもの」というレッテルが貼られていることに気付きました。ハーブはヨーロッパでは薬局で選ぶほどメディカルで体によいとされる食べ物。上手にとれば気持ちも体もパワーアップします。このハードルを下げることが、今年の目標です」。
今は家庭料理の他に、料理をしなくても食べられる方法を試行錯誤してレシピアップをしている毎日で、「日々勉強。現存の情報だけにとらわれず、こうやってみたら?とチャレンジしたいです」と目を輝かせます
農場で摘んだハーブを持ち帰り、季節や場面にあわせた料理のレシピを考えます。
左:初めての料理イベント時のPOP
自分で作りあげたもの。反省点はたくさんあれど、ときに見返す思い出の品。
右:グリーンのエプロン
ハーブ料理コンシェルジュとして活動するときは、必ず身に着けている。
左:ハーブの資格合格証
正しい知識を得るために勉強中。なかなか覚えられないハーブ名に苦戦!
右:大好きなローズマリー
集中力をアップさせる効能を持ち、かぐだけで気持ちが上向きに。
パート業務だけでなく、ハーブ料理コンシェルジュとして活動する!という目標を掲げた小早川さん。子どもたちは上は高校生、下は小学生に成長し、「ママを応援するよ」と確実にサポートしてくれたそう。「私が仕事で長時間家を空けてしまう日は、長女は料理を、中学生、小学生の息子たちはそれぞれ買い物や洗濯ものの担当に。私も!と小学生の次女はお掃除をしてくれて。きょうだいが多い分、チームプレイは得意のようです。おかげで安心して仕事に没頭できる日がたくさんありました」。
そして、何より旦那さまの応援が心に響いているそう。「私が個人的な仕事をはじめたら、ある日1冊の本を買ってプレゼントしてくれました。アメリカの本で、それまでにない分野の職業を切り開いて活躍している女性たちの本でした。ドラマチックな装丁に心躍り、夫よ、私が好きなものをわかっているなと(笑)」。
また、ご自身が働きだしたことで、毎日のお弁当作りへの気持ちも変わったといいます。「4人分ですから、しんどいという日も正直ありました。でも、お昼にお弁当のフタを開けるのが楽しみと思ってもらえるように、私がかけられるぬくもりをたくさん詰め込もう、という気持ちに変わりました」。朝バタバタと考えることからはじめるのではなく、前日に少しでも段取りをして、早起きする。それだけで4つのお弁当は時間通りにおいしくできることを身をもって体感したといいます。
「まだまだお弁当づくりはつづきますが、家族と自分をつなげるものと、大切に向き合いたいです」
「フタを開けたときにおいしそう!と思ってもらえるお弁当が私の理想です」。
左上:ホットプレート
週末の家族ごはんに必ず使用。みんなで囲む食事が何よりのパワーチャージに。
右上:東京マラソン完走メダル
2年前に出場、ギリギリでしたが、完走できたことは何よりの勲章。
下:夫の海外土産の置物
思わず笑った「ベストワイフ(妻)賞」と描かれたオスカー風オブジェ。
インタビュー*編集後記*
150cmと小柄な小早川さんは、お話ししている姿がとってもチャーミング。ハーブを手に持つと、そのハーブを見つめるまなざしがとても優しく、かつ力強 さもあり、ハーブヘの情熱をひしひしと感じました。やりたいことを実現させるには、いろいろと躊躇してしまうこともありますが、目を輝かせて走っている姿に、パワーをたくさんいただきました。
小早川 愛さん
こばやかわ・あい●ハーブ料理コンシェルジュ。ハーブをもっと気軽に使ってほしいと、長年の主婦目線と持ち前の明るさでメディアでも活躍中。今春社会人大学で活用方法の講師にも就任。夫と2男2女の6人家族。