秋の夜長をムダにしない! 眠りの質を高める生活習慣
構成・文/峯島由衣
ぐっすり眠れた日の朝の清々しさって気持ちいいですよね。この感覚、最近感じていますか?
年齢を重ねると睡眠に悩むという声を聞きますが、日中から就寝前までの過ごし方で快眠は得られるそう。そこで睡眠の専門家にお話を伺いました。
睡眠コンサルタント
友野なおさん
ともの・なお●SEA Triniry代表取締役。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会正会員。自身が睡眠を改善したことでダイエットや体質改善に成功した経験を持ち、睡眠を科学的に学ぶ。睡眠に悩む人に快眠メソッドを伝授。
http://tomononao.com/
睡眠は、時間より質! 病気リスクも回避できる
50代以上が多いめりぃさん読者には、「若い頃より睡眠時間が減った」「夜中に目が覚めて朝までぐっすり眠れない」といった悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
「年齢を重ねていくと睡眠が不安定になるのは、ごく自然なことなんです」と友野なおさん。
「夜になると睡眠を促し、良質な睡眠をサポートしてくれるホルモン“メラトニン”が分泌されるのですが、その働きは10代がピーク。その後はだんだんと分泌量が減ってしまうので、それが睡眠時間に現れているのです。
また、加齢や更年期後の体の変化の影響によって自律神経のバランスが崩れ、就寝時間にリラックス状態でなくなっていることもあります。睡眠に必要なのは睡眠時間ではなく“質”。
朝、シャキッと目覚められて、日中元気に過ごせているなら、睡眠は十分に取れている証拠です」
もし睡眠が不十分な場合、高齢者には体への影響も心配なのですが。
「生活習慣病やうつなど、身体的にも精神的にもリスクがあるといわれています。
特に、睡眠不足が続くと食欲中枢が乱れ、食欲を高めるホルモンが過剰に分泌。必要以上に食べてしまうことで、肥満への影響が大きいとされています。
これが引き金となり、糖尿病や高血圧、脂質異常症を招く恐れも。予防のためにも、良質な睡眠を得るために、日中から“睡眠ファースト”な生活を送ることが大切です」
体を疲れさせるために運動は夜が効果的
疲れるどころか活性化!寝る前は静かに過ごすこと
深部体温が下がっていくことで眠くなるメカニズムですが、その状態に向かいつつある夜に激しい運動をすると体温が上昇。夜は軽めのストレッチ程度に。
ちなみに、一日のうち身体能力が高くなるのは、体温が最も高い「就寝時刻の19時間後」。午後9時に就寝する人なら、午後4時くらいの運動が効果大。
睡眠におけるゴールデンタイムは22時~翌2時
個々の体内時計に合っていれば時間帯は関係ない!
細胞の新陳代謝の活発化や内臓脂肪を分解してくれる成長ホルモン。
その分泌が睡眠の前半にある深い睡眠時間に集中するといわれているので、時間帯で示されてきた経緯があると思われますが、寝る時間は人それぞれ。時間帯よりも、短時間でも深い睡眠にしっかり入ることができるかが肝心。
なんだかんだお酒を飲むと眠れる気がする
少量ならリラックス効果あり。就寝直前は睡眠の質低下一直線
お酒を飲むと眠れると思うのは、自律神経に麻酔がかけられている状態だから。自然なリズムでの睡眠ではないので、眠りは浅め。
また、お酒には利尿作用があるため、夜中に目を覚ましてしまう要因にも。暴飲は避け、夜はたしなむ程度の酒量で、就寝時刻の2時間前くらいにとどめておきたい。
コーヒーを飲まなければ眠りは妨げられない
就寝5時間前ならカフェインを摂取しても大丈夫
カフェインには、心拍数を上げて覚醒モードにする作用が。含有量にもよりますが、カフェインの持続時間は3時間程度。
眠気を促すホルモン「メラトニン」を十分に分泌させるためにも、カフェイン入りの飲み物は5時間前までに。カフェインは冷たいと体内の吸収が遅くなるので、飲むならホットが◎。
体内時計を整えることと呼吸法を整えることがカギ
先に出た“睡眠ファースト”な生活。ぜひ詳しく教えてください。
「睡眠には、その日の朝や日中の生活が影響します。朝起きたら、まず自然の光を浴び、メラトニンの分泌を抑制します。この行為で、夜の睡眠予約スイッチがオンになります。このことからも、就寝直前にテレビやスマホを見て目に光を入れることはNGなのです。
食事は三食を規則正しく取ることで、朝、昼、晩の体内時計が整います。特に朝食は、日中の意欲的な活動を後押しする成分“トリプトファン”(下のコラム参照)を多く含んだ食品をとりましょう。たんぱく質を多く含むトリプトファン、アミノ酸の代謝を助ける役割を果たすビタミンB6、体のエネルギーになる糖質を含むバナナがおすすめです。
また、日中の呼吸も大事。深い呼吸をするとリラックスをもたらす副交感神経が優位になり、夜の良質な睡眠へとつながります。普段から、鼻からゆっくり息を吸ってゆっくり出すことを心掛けましょう」
快眠のために日頃から意識することはいいけれど、あまり神経質になりすぎないで、と友野さんは言います。
「しっかり眠らなくちゃ、と思って意気込んでいると脳が緊張してしまい、かえって興奮状態に。さらに眠れないことがストレスになり、悪循環を招きます。まずはできることから、そしてラクな気持ちで始めてみてください」
トリプトファンをとると、その日一日いい気分になり心地よい睡眠へ
たんぱく質に含まれる必須アミノ酸「トリプトファン」は、幸せホルモン「セロトニン」のもと。トリプトファンは体内で合成できないので、食品で摂取しましょう。また、セロトニンは夜になると眠気を促す「メラトニン」に変換。トリプトファンを多くとることで、より快眠に導いてくれます。
トリプトファンはこんな食品に含まれています!
- 乳製品
- 卵
- 肉
- 赤身の魚
- 大豆製品
- ナッツ類
- アボカド
- バナナ
など
冷え防止のために熱い湯に浸かってすぐに寝る
「気持ちいい」けれど興奮状態プラス疲れもたまる…
熱い湯に浸かった体は、激しい運動をしたときと同じで疲れも蓄積。快眠のための入浴方法は、38~39℃のぬるま湯に胸の位置まで浸かること。リラックスした状態で浸かることで、幸せホルモンの「セロトニン」の分泌が促され、「メラトニン」に変換されやすい。
動きがラクなスウェットやTシャツで寝ている
寝返りがうちやすいパジャマがベスト
着心地がラクでも、吸水性や保湿性、縫製が睡眠を邪魔している可能性あり。さらに厚手だと寝返りを妨げることも。パジャマは眠るための服なので、快眠に不可欠な、スムーズな寝返りのためのカットや縫製が施されている。素材はコットンやシルクがおすすめ。
目を疲れさせるために枕元で小説を読む
続きが気になる物語はNG。写真集やガイドブックがおすすめ
小説やマンガなどの物語は、眠くなったとしてもつい読み進めてしまったり、次の展開が気になって興奮状態になったりと、快眠のためには不向き。ゆったりとページをめくれる景色やインテリアなどの写真集、世界のガイドブックや地図など、何も考えずに眺められるものを。スマホやタブレットでは×。
眠れないと思ってもとりあえず布団に入る
無理に眠ろうとせず布団から出て単調な作業を
実は逆効果。気づかぬうちに「眠らなきゃ」とあせりを感じ、脳が活性化。30分たっても眠れない場合は思い切って布団から出て、ぬり絵や編み物、ネイルケアなど単調な作業をして穏やかに過ごして。あせりの原因になるので、眠くなるまで時計は見ないこと。