スペシャルインタビュー 伊藤千晃さん
撮影/小野坂直之 スタイリスト/ウツミサオリ
ヘア&メイク/松永奈巳 取材・文/中村さやか
笑顔を絶やさず、飾らない話しぶりが魅力的な伊藤千晃さん。
人気グループ『AAA』卒業後も、好奇心を大事に活動の場を広げています。
子育ての喜びや悩み、女性の健康について、話を聞きました。
出産の地ハワイで感じたやさしさと、息子の成長
この夏、2か月近くハワイでの短期生活に挑戦しました。私は5年前に『AAA』を卒業して間もなく、ハワイで息子を出産しているんです。夫の仕事の都合で訪れたのですが、英語もできないし初めての出産だったので、最初は「とんでもない!」って不安でしたね。
でも時間は勝手に流れていくというか。自然豊かで気候のよいハワイで過ごすうちに、徐々に出産への期待や希望が湧いてきました。ハワイの人って、妊婦や子ども、お年寄りに対して、とにかくやさしいんです。
ハワイでは親の判断で退院直後から外出可能だったので、新生児でも外に散歩に行くことができました。歩いているだけでいろんな人から「なんてかわいい天使を連れているんだ」「すごいことだね!奇跡だね!」と、たくさんの幸せな言葉をかけてもらったんです。それが自分の自信につながっていったのは、ハワイならではでした。
そのハワイに、いつか息子と観光ではないかたちで行ってみたいと、ずっと思っていたんです。そして、この夏、コンドミニアムを借りて、5歳の息子は現地のサマースクールに。
日本では甘えてばかりの息子でしたが、私が慣れない英語と格闘しながら、生活を整えるのに手いっぱいなのを見ると、自分の支度はちゃんと自分でやってくれました。ハワイの自然の中で遊ぶうちに体力もついて、すごく成長したなって思います。
朝一番に息子をハグするのが、私のモーニングルーティン。エネルギーをもらって、よし今日も頑張るぞとスイッチを入れます。自分のためですね(笑)。
そんなかわいい息子にも毎日ムカっとくることはあるし、怒ってしまうことだって何回も。母親としての正解を考えては落ち込むし、違うやり方はなかったのかと、毎日、失敗と反省の繰り返し。
ただ、息子にこうあってほしいと思うことは、一生懸命、理由を説明しながら話しています。「くちゃくちゃ食べるのはやめよう、なぜなら一緒に食べている人が聞いたら、たぶん気持ちよくないよ」とか。
教育方針に私の両親の影響は多かれ少なかれあります。自分が子育てをすると、親に教えてもらってよかったと思うことも多いですが、すべて正しかったとも思いません。それを自分なりにふるいにかけ、大事にしたいと思った部分を息子に引き継いでいこうと考えています。
「言葉」は常に大事にしていますね。私はSNS時代の中で芸能活動をしてきたから、言葉が人を救うことだけでなく、傷付ける力を持つことも知っています。
だから息子には、正しく使ってほしいんです。絵本を読みながら、私はこういう言い方好きだなぁとか、あなたはどう思う?と問いかけて、ちょっと小うるさい母親かもしれません(笑)。
幸せになるために起こる出来事を信頼する
写真左:今年の夏に訪れたハワイの海辺での1枚。自然豊かなハワイは、どこを撮影しても絵になり、目にするものすべてにパワーをもらえる場所だそう。
右:食べ過ぎてしまった翌日は、野菜スープでデトックス。じっくり煮ると野菜の甘味が出るので、味付けは塩や黒コショウだけで十分とか。たっぷりつくって数日かけて食べるのがお決まり。
ネガティブ思考のときは環境を変えてリフレッシュ
ネガティブ思考に陥るようになったのは、子どもが生まれてからかな。18歳でデビューしてからは夢をつかみたいと、がむしゃらに頑張って東京ドームのステージにも立てました。大きな自信を得たし、ネガティブを跳ね返すパワーもあった気がするんですよ。
でもたぶんそれは、自分しか守るものがなかったから。出産して、息子を真っ先に守っていかなきゃと思ったとき、まったく別の感覚になりました。守るものができて強くなったけれど、自分の未熟さに自信がなくなってネガティブになるっていう、両極端な面が存在するなと感じています。
あと、息子ができてから、よく泣くんですよ。出産前は変に心も大人になっていたし、泣くのを我慢することを覚えてきたから、全然泣けないクールな部分がありました。でも泣くのは人に対して一生懸命だからだと我慢をやめたら、いっぱい笑えるようにもなりました。
ネガティブから抜け出せないときは、環境を変えるのが一番いいなとハワイ滞在で感じました。自分の部屋や職場などの日常を離れて思考を変えることが大事。
私は最近、銭湯やサウナで自分の頭と体をリフレッシュさせています。「セルフラブカード」というトランプのような物も持っていて、これも面白いんです。「今日、自分を一番褒めてあげたいことは何?」といった、自分自身に問いかける質問が書かれているのですが、今の気持ちを言葉にして確かめると、意外な発見もあってちょっとラクになります。
私は“いい子でいよう”と思いがちですが、疲れちゃうし苦しい。本当の気持ちを心の中で叫ぶと、気分転換になってバランスが保てます。
「フェムテック」に注目中。骨盤を意識して体を整える
最近、スキンケアが楽しいんです。肌をじっくり観察するようになって、食べ物の影響の大きさを実感しました。思えば自分の心と肌が整っているときは、食事にも気をつけていて、肌は心のバロメーターでもあるなって。
肌だけでなく、食事は体調にも影響しますね。お肉が大好きなんですが、食べると体が重くて…。量を減らしたら、翌朝の体がラクになって、「よし動こう!」という気持ちに。知人との会食では我慢せず食べて、翌日以降は野菜たっぷりのデトックススープで胃を休ませます。低温調理器でじっくり煮ると野菜の甘味が出て美味しいです。
35歳の今、興味が湧いている分野が「フェムテック」。女性の健康課題をテクノロジーで解決しましょうという意味の造語です。検定を受け、資格も取得しました。月経・出産・更年期障害は多くの人にあてはまるので、何か頼れるアイテムがあるなら、そんなラッキーなことはないなと。
例えば私は、生理用ナプキンから吸水ショーツに変えました。ステージでのダンス中もずれて漏れる不安がなく、もっと早く知っていたら自分がラクに生きられる時間が増えたのにって。
私はダンスの経験から自分の体に敏感。妊娠中には骨盤が広がるミシミシっという音が聞こえて、助産師さんに驚かれたことが。なので、骨盤周りに注目しながら体を整えています。
高齢になると骨盤周りの筋力が低下して子宮が膣外に出る子宮脱の人も多いと聞きます。昔は膣の話題なんて…という風潮でしたが、今は健康のために声を上げていこうという世の中。そんなことをみんなに伝えて共有しながら、もっと女性が元気で活発に過ごしやすい社会にしていくことが私の目標です。
本人直筆
伊藤 千晃さん
いとう・ちあき●1987年生まれ。歌手、モデル、タレント。2017年に『AAA』を卒業し、翌年からソロで音楽活動を開始。アルバムの発表の他、自身のブランドの立ち上げ、トークショーなど幅広く活躍する。インスタグラム(@kikichiaki)でファッションやコスメの情報を発信中。