2021年8月公開の注目映画3選【今年の夏は邦画がすごい!】
今回ご紹介するのは『キネマの神様』『映画 太陽の子』『ドライブ・マイ・カー』の3作。
キャスティング、監督のこだわり、原作小説や脚本のおもしろさ、海外の映画祭での受賞など注目ポイントいっぱいの邦画が、この夏話題になること間違いなしです!
【1】山田洋次監督の映画愛が詰まった『キネマの神様』
© 2021「キネマの神様」製作委員会
作品情報
『キネマの神様』8月6日公開
監督:山田洋次
出演:沢田研二 菅田将暉 永野芽郁 野田洋次郎 北川景子 寺島しのぶ 小林稔侍 宮本信子
原作:原田マハ「キネマの神様」(文春文庫)
配給:松竹
ストーリー
ギャンブル漬けで借金まみれのゴウ(沢田研二)は妻の淑子(宮本信子)と娘の歩(寺島しのぶ)にも見放されたダメ親父。
そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」。行きつけの名画座の館主・テラシン(小林稔侍)とゴウは、かつて撮影所で働く仲間だった。
若き日のゴウ(菅田将暉)は助監督として、映写技師のテラシン(野田洋次郎)をはじめ、時代を代表する名監督やスター女優の園子(北川景子)、また撮影所近くの食堂の娘・淑子(永野芽郁)に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかしゴウは初監督作品『キネマの神様』の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。
半世紀後の2020年。あの日の『キネマの神様』の脚本が出てきたことで、ゴウの中で止まっていた夢が再び動き始める。
(パンフレットより引用)
見どころ
原田マハさんの原作小説のエッセンスをすくい取り、山田洋次監督が松竹映画100周年記念作品として制作。
主人公のゴウを演じることが決まっていた志村けんさんの急逝や、緊急事態宣言による撮影の長期中断などの困難な状況を乗り越え、ハートフルで映画愛にあふれた作品が完成しました。
ゴウの過去パートでは、山田監督が若かりし頃に過ごした撮影所の雰囲気を再現し、実在の映画監督や女優を彷彿とさせるキャストが登場。
フィルム時代の活気あふれる映画制作現場の風景が目の前に広がり、その時代を知らずともノスタルジックな気分に。
若き日の情熱あふれるゴウを演じる菅田将暉さんとは対照的に、ギャンブル好きのダメ親父になったゴウを演じた沢田研二さんは、飄々としていてかわいげがあり、憎めないキャラがぴったり。ぜひスクリーンで観てほしい、日本映画らしい映画です。
【2】『映画 太陽の子』
©️ 2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「映画 太陽の子」フィルムパートナーズ
作品情報
『映画 太陽の子』8月6日公開
出演:柳楽優弥 有村架純 三浦春馬 國村隼 田中裕子 イッセー尾形 山本晋也 ピーター・ストーメア
監督・脚本:黒崎博
配給:イオンエンターテイメント
ストーリー
1945年の夏。軍の密命を受けた京都帝国大学・物理学研究室の若き科学者・石村修(柳楽優弥)と研究員たちは原子核爆弾の研究開発を進めていた。
研究に没頭する日々の中、建物疎開で家を失った幼馴染の朝倉世津(有村架純)が修の家に居候することに。
時を同じくして、修の弟・裕之(三浦春馬)が戦地から一時帰郷し、久しぶりの再会を喜ぶ3人。
ひとときの幸せな時間の中で、戦地で裕之が負った深い心の傷を垣間見る修と世津だが、一方で物理学に魅了されていた修も、その裏側にある破壊の恐ろしさに葛藤を抱えていた。
そんな二人を力強く包み込む世津はただ一人、戦争が終わった後の世界を見据えていた。
それぞれの想いを受け止め、自分たちの未来のためと開発を急ぐ修と研究チームだが、運命の8月6日が訪れてしまう。
日本中が絶望に打ちひしがれる中、それでも前を向く修が見出した新たな光とは?
(パンフレット参照)
見どころ
ハリウッドのスタッフも参加した日米合作で、戦時下の日本を映し出した作品。昨年NHKで放送されたTVドラマ版とはまた少し違った視点で編集された映画版です。
日本にも原子核爆弾の開発を進めていた科学者チームがいたという史実を基に、修という科学者や研究仲間、その家族を通して戦争が描かれています。
主人公・修役の柳楽優弥さんは、今年『HOKUSAI』など主演作が相次いで公開され、どの作品でも気迫のこもった目の演技が印象的。『映画 太陽の子』では実験オタクの科学者を演じ、少し抜けている部分を見せたかと思えば、研究のことしか考えられず危険な思想にとらわれそうになる危うさも見せるなど、すばらしいの一言。
めりぃさん世代は修の母・フミを演じた田中裕子さんの、感情を抑えたたたずまいの中から透けて見える母親の強さ、優しさ、息子を思う気持ち、凄みにきっと圧倒されるはずです。
【3】村上春樹の小説を映画化してカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』
©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
作品情報
『ドライブ・マイ・カー』8月20日TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
出演:西島秀俊 三浦透子 霧島れいか/岡田将生
原作:村上春樹 「ドライブ・マイ・カー」 (短編小説集「女のいない男たち」所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
音楽:石橋英子
配給:ビターズ・エンド
ストーリー
舞台俳優であり演出家の家福(かふく)(西島秀俊)は、愛する妻の音(おと)(霧島れいか)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。
2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去を持つ寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と出会う。行き場のない喪失感を抱えて生きる家福は、みさきと過ごすなかであることに気づかされていく。
(パンフレット参照)
見どころ
三大映画祭と言われる、カンヌ、ベルリン、ヴェネチア国際映画祭への出品や受賞が続き、世界から注目を浴び続けている濱口竜介監督の最新作。
今作も、第74回カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞しました。村上春樹さんの短編小説を映像化するため自ら脚本を練り、なんと179分の長編映画という形に。主人公が舞台俳優・演出家なので、劇中劇として「ワーニャ伯父さん」や「ゴドーを待ちわびて」といった演劇作品を取り入れており、観ているうちに演劇とセリフと登場人物のセリフが次第にリンクしていくような不思議な感覚に陥っていきます。
家族に関して互いに喪失感とやりきれない思いを抱える家福とみさきが、自分や過去と向き合う姿が丁寧に描かれていて、長さを感じず作品世界に没頭できます。
この記事の著者
富田夏子(とみたなつこ)
女性誌やweb媒体を中心に、エンタメや生活情報の記事を執筆しているライター。
2007年~女性向け週刊誌の契約記者。ハリウッド俳優やオリンピックメダリストへのインタビュー、日本の名医シリーズなど幅広い記事を執筆。2011年~主婦向け月刊誌記者。映画、DVD、音楽、本のレビューなどエンタメページを長年連載。イケメン若手俳優の取材記事や、モデルのインタビュー連載も担当した。現在、娘2人の子育てをしながら、雑誌やweb、書籍のライティング・編集などを手がけている。