2021.12.24 UP
おすすめ暮らしと生き方特集・連載趣味と教養

「上糖舶来」オーナー ・小島和美さん【輝く人のON/OFF】

撮影/楠 聖子 取材・文/新里陽子

パティシエ・スイーツ店オーナー

小島和美さん

パティシエ。料理研究家でもあり、レシピ制作やフードスタイリングなどでテレビ・雑誌などの出演も多数。著名人や企業などから依頼を受け、パーティ用のオーダースイーツも手がける。

輝く女性の「ON」と「OFF」の過ごし方や考え方にスポットをあてる連載企画。
今回ご登場いただくのは、東京・白金台のスイーツショップ「上糖舶来(じょうとうはくらい)」のオーナーパティシエ・小島和美さん。
さまざまな経験を経たのちにたどり着いた“今”について、たっぷりとお話を伺いました。

好奇心の赴くままにチャレンジを続けWEB制作会社社長からパティシエへ転身。
アイデアのつまったお店がオープン

内気だと思っていた少女時代。クラスメイトがきっかけで自信溢れる陽気キャラに!

香川県に生まれ、31歳まで過ごしたという小島さん。幼少期に両親が離婚し、父方の祖父母の家で育ちました。
「一人っ子の私は、幼少期から一人遊びには慣れっこ。黙々と絵を描いたり、工作や読書をしたりして過ごしていました」

そんな小島さんでしたが、小学6年生のときにはクラスで一番面白い人に選ばれるほどの陽気キャラに。そして成長するに連れ、「楽しいことをするために早く自立したい」との思いも溢れていったそう。

 

最初に就職したのは天気予報を制作する会社。そこから印刷物のデザイナーへ転職し、デザインの仕事のいろはを習得。

WEB制作会社に転職後は、企画もののコンテンツを考えるディレクター業、組織を束ねる管理職、とさまざまなポジションを経験していきました。その経験と知識をもとに、今度はWEB制作会社を設立し、小島さんは代表取締役社長に。トントン拍子にキャリアを積み重ねてきた小島さんは、次なる夢「東京で事業を拡大する」ために、早速行動に出ます。
「思い立ったら、迷わず準備を開始。当時はまだビジネスパートナーだった夫と二人、東京に出て行きました」

WEBのデザイナーをしていた頃。携帯電話のコンテンツやホームページのデザインなどを手がけ、徹夜続きなことも多かった時期。

未経験の分野に飛び込むことには不安よりワクワクを感じる

会社社長としてバリバリ働いていた小島さんが、どのような経緯でパティシエになったのでしょうか?

 

「子どもの頃からの夢だったわけでもないので、周りの人からも展開が謎めいているとよく言われます(笑)。たまたまそのときに興味がある方向に進んだだけ。例えるなら、すごろくのように、自分の人生を1コマずつ進んだ先にパティシエがあって、今そこに立っている感じですね」

 

振り返りながら軽やかに笑って話す小島さん。未経験でも、躊躇(ちゅうちょ)なく新しい世界に飛び込めたのは、好奇心の赴くまま挑戦してきた生き方の賜物。その姿は、凜(りん)としています。

 

「もともと料理も人をもてなすのも好きで、当時よく人を自宅に招いていました。そしてあるとき、私の料理を気に入ってくれた人からサイトのレシピコーナーを小島さんに任せたい、とお話をいただいたんです。テーマはスイーツ。でも、料理に比べてスイーツはほぼ自己流でやっていたので、これを機に“イチから習ってみよう”と夜間の製菓専門学校へ通うことを決めました」

 

卒業後、社長を務めるWEB制作会社を続ける傍ら、39歳のとき、東京・表参道にあるスイーツ店に弟子入りをします。

 

「多数応募して面接にこぎつけたのは2社。当時、この年齢で採用していただいたときはとてもうれしかったです。しかし現実は、20も歳の離れた同僚たちとともに、冬はまだ暗い朝6時から入店し、夜までの勤務の日々。つらくなかったといえば噓になりますが、自信にもつながりました」

コロナ禍をきっかけに構えた店舗。自分もお店もまだまだ成長中

その後、フリーランスのパティシエとして活動していましたが、コロナ禍による外出自粛や生活スタイルの変化から、スイーツづくりの方向性を変えることに。

 

「パーティなど人が集まる催しがなくなり、自ずと私の仕事も減りました。そこで、“お店を構えればお客さまが自宅で自分のスイーツを楽しんでくれるのでは”と思い、今の場所にお店をオープンしました」
これまで身につけた技術とセンスで、お店は無事に2年目を迎えています。

パティシエの資格取得後、店舗での修業を経てフリーランスのパティシエとして活動。企業や個人のお客さまからのオーダーケーキを多く手がけ、その繊細でかわいい出来栄えが口コミでどんどんと広がりました。

2020年、コンパクトなスペースながらも、本格的な設備を整え東京・白金台の住宅街にスイーツショップ「上糖舶来」をオープン。

華やかさよりも数字を読み解く力を磨いた日々

隠れ家のような佇まいの小島さんのお店は、住宅街の中にあります。フルーツやクリームなど、フレッシュな素材をふんだんに使ったタルトは色鮮やかでかわいらしく、瞬く間にクチコミで広がっていきました。

スイーツ店というと華やかなイメージが浮かびますが、そこは商売。店舗の装飾は二の次に、まずはお客さまに満足してもらう商品を制作。そして、どのような食材でどのくらいの量をつくるかなど、商品プロデュース力とマネーセンスを磨くこと。厳しい現実にも直面しました。

 

「当たり前ですが、売れ残った分はロスになります。反対にたくさんお客さまがいらっしゃる日に商品数が足りなくなるのは困ります。フリーランスでオーダー分のみをつくっていた私にとって、数字の感覚をつかむまでは試行錯誤の連続でした」

商品づくりは真剣そのもの。大きなお店ではないので、わずかなスペースを駆使して丁寧に作業します。見た目の可愛らしさと、ほどよい甘みが口いっぱいに広がるスイーツは、この場所から誕生しています。

有名インスタグラマーに評価され看板商品の注目度がアップ

「リサーチを重ねる中で、カラフルなものは心がウキウキすることに改めて気づいたんです。そこで、当時はまだあまり見かけなかったカラーメレンゲはどうだろうかと。数種類のフレーバーをそろえて店頭に並べたところ、お客さまの反応がよくて。売れ行きも少しずつ伸びていきました」

 

そんなある日、スイーツ界では有名なインスタグラマーさんが小島さんのお店のチョコミントのカラーメレンゲを食べ、「本当に美味しいスイーツ」と好評価の投稿をしてくれました。

 

「ご本人が実際に食べてくださったリアルな声だったので、うれしかったですね。美味しいという言葉は、元気の源になります」
その記事を読み、遠方から訪れてくれるお客さまも増えたと言います。
「現在、さらなる看板商品を考えています。忘れたくないのは“うちらしさ”を提供し続けること。まだまだリサーチと研究の日々ですね」

タルト生地に季節のフルーツやクリームがのった人気商品は、大き過ぎずに食べ切れるサイズ。コロンとした姿は「映え」も考えてのこと。買いやすいように、お値打ち価格なのもうれしい。

表参道のショップ時代から腕を磨いたオーダースイーツは、お客さまの要望を第一に、パティシエのエッセンスを加えたもの。満足のいく仕上がりにファンも多数。打ち合わせノートやケーキのデザイン帳など、丁寧な仕事ぶりが伺えます。

看板商品「カラーメレンゲ」

話題を呼んだ人気商品。右・チョコミントメレンゲスマイルサイズ¥1,940、左・苺メレンゲ¥520

 

15年目のパレットナイフ

クリームなどをのばすことに使うナイフとは長い付き合い。「これからもずっと使い続けます」

こだわりの材料

フルーツシロップやピューレなど、自然由来のもので風味や味をつけています。

 

お店のデザインTシャツ

小島さん夫婦がデザインした、遊び心をふんだんに盛り込んだTシャツを販売。制服としても採用。

私には必要な安らぎタイム基本的には「ずぼら」に

休みの日はどう過ごしているか?の問いに、「本当はできるだけ寝ていたい」と答える小島さん。忙しく過ごしていると、むしろ何もしないことこそが贅沢なのだそう。とはいえ、天気のいい日は、お気に入りのリュックを背負ってぶらりと街探検をすることも楽しみなのだとか。

 

「人が行き交う商店街や古びた建物など、生活に密接したものを見て歩くのが好きなんです。わざわざ珍しい場所に行かなくても、普段歩かない道を選択して歩くだけで、ちょっとしたドキドキ、ワクワク感があって面白いんです」

 

その探検のお供に連れて行くのが、家族同然に一緒にいるぬいぐるみたち。
「映画『スター・ウォーズ』に登場するイウォークが大好きで、服を着せたりお出かけ先で写真を撮ったりしたものをSNSで配信しています。同じ趣味の方たちとつながれるって楽しいですね。SNSなら自分の好きなタイミングで仲間とコミュニケーションがとれるので、私の生活スタイルにはフィットしています」

映画『スター・ウォーズ』に登場するイウォークはお気に入りのぬいぐるみ。3体にはそれぞれ小島さんが考えたキャラクター設定があり、癒やしの存在だそう。彼らと一緒に撮影した写真は、即SNSで配信!

小島さんにとって、お互いを支え合う家族の存在も大きいと言います。
「遠方に住む父と祖母は要介護者となり、今は介護施設で暮らしています。コロナ禍なので気軽に会いに行くことはできませんが、施設の皆さんのおかげもあって元気に過ごしているようです。
また、お店を一緒にやっている夫は、無理をしなくても、気を使わなくてもいい大切な存在。疲れたときは何もしなくてもお互い言わない、でも何かしてくれたときはありがとうの言葉を忘れないようにしています。これからも二人仲よく、ゆったりと過ごしていくことが私の夢です」

同じ介護施設で暮らしている父と祖母。写真は施設を訪れたときに小島さんが撮影したもの。「認知症の症状があり、食事などの生活は介護施設の皆さんに助けていただいています。本人たちはもちろん、娘の私も安心しています」

アディダスのリュック

材料の買い出しや街探検で愛用。軽さとデザインが気に入り、シーズンごとにチェックし購入。

 

スマホとスマホケース

お店ではレジにもなるスマホは、なくてはならない存在。大好きな鳥モチーフのケースで気分アップ。

 

夫婦マグ

自宅で過ごすときに愛用のマグ。赤は小島さん、緑は夫のもの。ゆったりとお茶を飲む時間が宝物。

インタビュー*編集後記*

初めて会ったときから、以前からの知り合いであったかのような親近感を、小島さんには抱いています。聞き上手なので、こちらもつい話し込んでしまうのです。そんな小島さんのスイーツは、美味しいだけでなく、やさしい気持ちにさせてくれるパワーが。プレゼントはもちろん、自分へのご褒美にぜひ!

上糖舶来(じょうとうはくらい)

住所/東京都港区白金台4-13-10
インディゴハウス1階
営業時間/金・土・日曜13:00~18:30
※最新の情報はホームページをご確認ください
https://jotohakurai.thebase.in/

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