健康寿命のカギは口腔ケアにあり【白ゆりグループ】
撮影/蘒野孝行
構成・文/明滝 園
いつまでも自分の口で食事をとることは、大きな喜びの一つ。
今日から行いたい正しい口腔ケアを、白ゆりグループが提携するクリニックのスタッフに聞きました。
医療法人社団 緑稜会 みどりクリニック 歯科医師
中澤誠多朗さん
「患者さまの口の健康づくりをサポートして、食べることを支援します」
医療法人社団 緑稜会 みどりクリニック 歯科衛生士
中川 愛さん
「仕草や言葉づかいに気を付けつつ、患者さまの希望や不安に寄り添います」
口腔ケアは健康の一丁目一番地
中澤誠多朗さん(以下、敬称略)
口腔ケアと聞くと、虫歯や歯周病予防など「歯と歯茎の清掃」と考える人が多いですよね。しかし広くとらえれば、口腔全体を健康に保つための取り組みすべてが口腔ケアだといえます。
かんだり、味わったり、飲み込んだり、会話をしたりといった口のさまざまな役割を良好に保つことも口腔ケア。口腔を健康に保つことが、全身の健康増進にもつながります。
中川 愛さん(以下、敬称略)
口の中には約300種類の細菌がいるといわれています。歯磨きが不十分だと細菌が増殖し、大量の細菌を含んだ唾液を誤嚥(飲み込んだ飲食物などが何かの理由で気管に入ってしまう状態)すれば、肺炎を起こす可能性も。
例えるなら、口は体の“玄関”であり、体は“部屋”。玄関に放置された汚れが、部屋にどんどん侵入するイメージですね。
歳を重ねるほど口腔衛生を意識する
中川
高齢者の場合、唾液で細菌を洗い流す力が落ちることも、病気にかかりやすくなる一因になります。
中澤
最近では、新型コロナウイルス(以下、コロナ)が舌や口腔粘膜から感染しやすいという事実に基づいて、口の健康とコロナについての研究が行われています。
また、これからの季節に危惧されているのがインフルエンザウイルスの流行。専門的な口腔ケアを受けている高齢者のインフルエンザ感染の発症リスクは、10分の1に抑えられたという報告があります。
普段から歯医者に定期的に通ってブラッシングの指導を受けている人で、ご自身の口のケアに自信をお持ちだったり、あるいは自分の歯がもうないからといって口のケアに関心がなかったりする人も多くいますが、油断は禁物。
加齢とともにかむ、味わう、飲み込む、話すという口の機能が低下してくると、全身の健康に影響を与えます。固いものがかみづらくなる、食事のときにむせる、会話のときに発音しづらくなるなど、些細なことでも気が付いたら、歯医者で「口腔機能検査」を受けることをおすすめします。
中川
高齢者の口腔環境で起こりがちな問題が、味覚の変化です。
人は舌の表面にある味蕾という器官で味を感じます。しかし、高齢者は唾液の分泌量が少ないため舌の表面に汚れが残りやすく、味蕾の働きが鈍って味を感じにくくなることがあります。
その結果、味が薄いと勘違いし、過剰に濃くした味付けの料理を日常的に食べてしまうことにも。次第に栄養の偏りを招き、体調不良に陥ってしまうことにつながりやすいのです。
中澤
口腔内の乾燥(ドライマウス)も高齢者に多く見られる症状です。
加齢やかむ力が低下することなどにより、唾液の分泌量は減ります。口腔内の細菌を洗い流す役割がある唾液の分泌量が落ちれば、細菌が繁殖し、結果的に虫歯や歯周病、口臭の原因にもなります。
人と話すのが楽しくなるかも⁉ 口腔環境が生活の質をも左右する
中澤
口腔ケアの目的は大きく分けて二つあります。
一つ目は、歯や口の疾患を予防し、口腔の機能を維持すること。虫歯や歯周病などを予防し、かむ力と飲み込む力を保ちます。
口腔機能が良好だと、唾液の分泌も促進されます。唾液が多いほど口腔内の殺菌力は上がり、歯の再石化力(初期の虫歯を自然に治す力)もアップ。唾液には口臭予防の効果もあるので、積極的に人と話すのが楽しくなるかもしれませんね。
また、意外と知られていませんが、かめばかむほど味覚の機能は高まります。人にとって自分の歯や舌を使って食事をする、食べ物を味わうということは、生活の質や生きる喜びに深く影響します。
二つ目は、あらゆる疾患を予防し、全身の健康状態を維持・向上すること。
口腔環境、主に歯周病菌は糖尿病、心臓病(心筋梗塞、狭心症など)、認知症などの病気とリンクしています。血液中に入った歯周病菌が、心臓病を誘発した事例も。
アルツハイマー型認知症は、脳内で異常なたんぱく質がつくられることが発症原因とされていますが、近年、このたんぱく質の脳への蓄積を、体内に侵入した歯周病菌が加速させてしまうという研究も発表されました。
また、歯の下には血液を脳に送るポンプの役割を果たしている歯根膜という器官があり、かむことで活発に機能します。かむ回数が減れば脳に供給される血液が減少し、脳の機能が低下してしまうのです。
中川
日頃の口腔ケアが命を救うことにつながる事実は、これからももっと多くの人に伝えていきたいです。
高齢者に起こる肺炎の70%以上が誤嚥性肺炎とも。それが、口腔ケアによって発症率を40%にまで減少させられるといわれています。
さらに肺炎になると、抗菌薬を使用しても20%程度しか救命できないと想定されているなか、口腔ケアを行っている人が肺炎を罹った場合、死亡率を50%まで下げられるというデータもあります。
家族によるケアサポートは“できること”から
中川
家族とはいえ、人の口の中を見たり触ったりすることをためらう人は多くいます。
ケアをされるほうも、最初は抵抗感があるのが自然ではないでしょうか。私たちはご家族に「実際にやれること」を提案します。
「食後にお茶を一杯飲んでもらう」「うがいを促してみる」「義歯を外してもらってすすぐ」など、ケアをする側もされる側も負担の少ないことから提案するのがベストです。
あとは一週間に一回、歯科衛生士が口腔状態や日頃のケア方法を確認することで、ご家族と二人三脚でケアを行うことが可能になります。
中澤
必要な口腔ケアとそのやり方は、人によって異なります。ただし共通して気を付けていただきたいのは、口の中をライトなどで照らしてよく観察すること。
この際に、天井の照明などで照らすと、自然にあごが上がった姿勢で口を開けることになり、唾液などが気管に入って誤嚥が生じやすくなります。必ず正面を向いてあごを引いた姿勢で、観察とケアを行いましょう。
中川
歯ブラシで舌や頰などの粘膜をごしごし磨いて傷つけてしまうこともあります。ケアをされる人が、口腔ケアへの恐怖心を抱きかねません。
高齢者の粘膜は乾燥によって硬くなり、少しの刺激でも痛みを感じやすいのです。柔らかく刺激の少ない介護用のスポンジブラシなども市販されているので、上手に活用してください。
わからないことや不安なことは、歯科の専門家や、歯科と提携する施設に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
今日から実践! 正しい口腔ケア
毎日の意識的なケアで口腔環境はぐっと改善します。
歯磨きや舌の状態チェック、唾液分泌を促すマッサージなどを行ってみましょう。
歯ブラシはやさしく鉛筆を持つように握る
多様なケアアイテムを使いこなそう
保湿成分が口内に潤いを与えて保つ
とろみのあるスプレー液が口臭の元を除去。ヘルパータスケ モンダミン マウススプレーうるおいジューシー 80ml オープン価格/アース製薬 0120-81-6456
水がないときの歯磨きにも!
メッシュシートが汚れをキャッチ。オーラルプラス 口腔ケアウエッティー スッキリタイプ・マイルドタイプ100枚¥880/アサヒグループ食品 0120-630-611
舌にやさしいソフトな設計
歯ブラシより柔らかい高密度毛束で、舌の表面に付着した汚れをやさしく落とす。NONIO舌クリーナー 2色 ¥280(編集部調べ)ライオン/0120-556-913
凹凸が汚れをすっきりからめ取る
凹凸のあるスポンジの側面で、粘膜の汚れを取り除く。マウスピュアⓇ口腔ケアスポンジS・M・Lサイズ 50本入 ¥2,200/川本産業 06-6943-8956
歯ブラシは45度の角度で当てる
あなたは大丈夫? 舌は健康のバロメーター
舌は味覚を感じるだけの器官ではありません。
その色や形状などで全身の健康状態を知ることができる、いわば健康の指標です。
栄養不足の舌
舌の中央部が白っぽく、縁には歯形が付いている。疲労がたまっている可能性も。
血行不良の舌
全体的に紫がかっていて、紫暗色の斑点がある。冷え性などの人は要チェック。
水分不足の舌
舌表面に亀裂が入り、色はやや黄色っぽい。水分不足は高血圧の原因にも。
やってみよう唾液分泌マッサージ
口の中には唾液腺が3つあります。それらをマッサージして刺激し、唾液の分泌を促進。食事前に行うのがおすすめです。
耳下腺(じかせん)マッサージ
親指と小指以外の3本の指を左右それぞれの耳の前に当てる。後ろから前に向かってゆっくり、指の裏側全体を使って広い範囲を、円を描くように回す。10回程度繰り返す。
舌下腺(ぜっかせん)マッサージ
顎下線(がっかせん)マッサージ
白ゆりグループ(株式会社メディカルシャトー)
■本社
住所:北海道札幌市中央区南9条西7-1-28
電話:011-511-1023
■函館本社
住所:北海道函館市美原2-50-2
電話:0138-34-3231
施設のサービス
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より詳しい情報は白ゆりグループホームページをご覧ください。
https://www.shirayuri.gr.jp/