2021.10.28 UP
健康と食暮らしと生き方特集・連載

医療と介護で地域を支える企業、白ゆりグループ

撮影/蘒野孝行 イラスト/南 佳奈江

構成・文/明滝 園

 

年齢とともに、咀嚼した食べ物を飲み込みづらくなったと感じたことはないでしょうか?
今回、今ある“飲み込む力”を保つ方法を、白ゆりグループのスタッフが解説します。

訪問看護リハビリステーション 白ゆり新さっぽろ 言語聴覚士

石川千亜紀さん

「利用者さまの価値観などを尊重した支援をします」

訪問看護リハビリステーション 白ゆり新さっぽろ 理学療法士

渡會秀司さん

「利用者さまやご家族との信頼関係を大切にします」

“飲み込む”ことはのどの筋力によって行われる

食べ物や飲み物を飲み込むことを「嚥下」といいます。
咀嚼したものや唾液は、喉頭(のど仏)の働きによって食道に送られますが、加齢とともにのどの筋力が衰えることで喉頭をうまく動かせなくなり、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が弱まってしまいます。
これは、シワができる、白髪が出てくることと同じように、加齢によって誰しもに現れる症状です。

飲み込めなくなるだけではない! 嚥下障害の怖さ

食べたものが飲み込めなくなる、飲み込みにくくなることを「嚥下障害」といいます。主な症状としては、次のものが挙げられます。

  • 飲み込みにくさを感じる
  • 食事中によくむせる
  • たんがのどによく絡む
  • 口の中に食べ物が残る
  • 食事に時間がかかるようになった

この中でもむせは代表的な症状ですが、むせが起こらない「不顕性誤嚥」という症状もあります。本人も周囲も気付かないうちに嚥下障害が起こってしまうのです。
これらのことから、食事が楽しめなくなることによって連鎖的に起こる不調も嚥下障害の怖いところ。例えば、食べ物から摂取する栄養が少なくなれば、栄養失調や脱水状態に陥る可能性があります。

また、体力の衰えは意欲の低下につながり、うつ病などを発症するケースも。単純に飲み込めなくなる、飲み込みづらくなるだけではなく、生活の質や健康に大きな影響を及ぼしかねません。

 

さらに注意したいのが、誤嚥性肺炎。胃に送られるはずの食べ物が細菌や唾液とともに気管を通って肺に入り、肺炎を起こす疾患です。通常なら反射的にむせて食べ物を口から排出しますが、のどの筋力が弱まっていることでその反射機能が働かず、肺に入ってしまうのです。
厚生労働省の調べによると、誤嚥性肺炎で死亡した人は2019年には4万354人だったのが、2020年には4万2746人に増加しています(※)。昨今は、コロナ禍によって人と話す機会が減少。のどの筋力を使う機会が減っていることが嚥下障害を誘発し、誤嚥性肺炎を発症する人が増加した一因になったと推測されます。
特に高齢者の場合、自炊が負担となったり、活動量の減少で食欲が落ちしたりすることで、結果的に食事の回数が減り、のどの筋力低下を招いているケースもあります。

 

※出典:厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況、厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況

自覚がない場合もある誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎の典型的な症状として、発熱、咳、たんの増加が挙げられます。しかし、これらの症状は必ず起こるわけではありません。食欲がない、なんとなく意欲がわかない、微熱がある、のどがゴロゴロするなど、日常的な不調と区別がつきにくい場合もあります。

受診するきっかけがなく、いつの間にか重症化していた例も。免疫力が低下している高齢者は、体に異物が侵入しても戦う(熱を出す)ことが難しいため、本人はなおさら自覚しにくいのです。

 

嚥下障害や誤嚥性肺炎にならないためには、口腔周りの健康を保つことが重要。例えば、歯磨きを怠っていると口腔内が雑菌だらけになり、それが誤嚥で肺に入れば肺炎を起こすリスクも高まります。

 

ところで、「フレイル」という言葉をご存じでしょうか? 加齢による心身の衰えが出ている状態をいい、健康な状態と要介護状態の中間地点に当たります。口腔に関する「フレイル」は、「オーラルフレイル」と呼ばれています。

あなたは大丈夫? オーラルフレイルチェック表

「嚙めないものが増えた」「水分を飲み込みにくくなった」。

こんな変化を感じた方は要注意! まずは自分の口腔の健康状態を確認してみましょう。

 

オーラルフレイルをどこでも簡単にチェックできる問診票です。
3点以上の「危険性あり」となった人には、専門的な対応が必要です。

合計の点数が

0〜2点

オーラルフレイルの危険性は低い

3点

オーラルフレイルの危険性あり

4点以上

オーラルフレイルの危険性が高い

※歯を失ってしまった場合は、義歯などを適切に使って硬いものをしっかり食べることができるよう治療することが大切です。
出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島先生らArch Gerontol Geriatr.2021

嚥下障害にならないためのケアをご紹介!

現状より嚥下機能を低下させないために、口腔ケアはもちろん、食べ物の硬度と全身を意識した姿勢による食事が大切です。

 

口腔内を清潔に保って雑菌の増加を予防

口腔内を清潔に保つことは、嚥下障害を防ぐための基本。汚れが付着しやすい箇所に注意し、毎日歯磨きを行いましょう。
気を付けたいのが、寝ているときも唾液を誤嚥する可能性があるということ。もし誤嚥した場合、唾液に含まれる雑菌が多いほど誤嚥性肺炎になるリスクは高まります。
それを減らすために、夜の歯磨きは、より丁寧に行うことがポイントです。

身体状況に合わせて食形態を見極める

軟らかい、あるいは水分を多く含む食べ物が飲み込みやすいとは限りません。嚥下機能の状態は人によって異なります。
認知症の方だと、軟らかい食べ物を「食べ物」と認識できないことも。介護者が判断するのは難しい場合が多いので、言語聴覚士がいる医療機関へご相談ください。

正しい姿勢で口腔周りの筋肉を使う

食事をするときの姿勢で特に大切なのが、膝を90度に曲げて足を床にしっかり付けること。
人は足で体全体を支えて、のど周辺の細かい筋肉や口腔器官を使っているからです。
車いすに乗ったまま食事をする場合は、フットサポートから足を下ろし、床に足を付けてからにしましょう。

やってみよう! 嚥下体操

口周りだけでなく肩や胸の筋肉を刺激したり、ほぐしたりすることは嚥下機能の維持につながります。毎日食事の前に10分程度やってみましょう。

 

頰を膨らませたりすぼめたりを繰り返す

頰を刺激する体操です。頰は食べ物を口の中で移動させるときに使われ、両頰には唾液腺があります。

①できる限り口に空気を含み、頰を思いきり膨らませる。食べ物を嚙むときに使われている咬筋(上下の歯を嚙み合わせたときに動くあごの筋肉)をほぐす効果もある。

 

②今度は思いきり頰をすぼめる。この膨らませたり、すぼめたりする動作を3~4回繰り返す。主に頰と口周りの筋肉が刺激される。

 

舌で左右の口角に触れ最後に伸ばす

舌は7つの筋肉から構成され、これらの筋肉が衰えると舌がだらりと落ちてきてしまい、嚥下機能が低下する原因に。

①舌の先を左の口角に当てる。
②右の口角に当てる。それにより舌の位置を動かす外舌筋が鍛えられる。
③舌をべーっと出して伸ばす。
これら3つの動きを3~4回繰り返して。

 

肩を上下に動かす

肩の筋肉をほぐすことで、胸が開きやすくなります。

①両肩をできる限り上に上げる。

②①の状態から、すとんと肩を落とす。繰り返すことで胸筋の緊張がやわらぎ、胸が開きやすくなるのと、食道が狭まることを予防できる。

「パパパ」「カカカ」「ラララ」と発音する

唇と舌の動きに意識を向けながら、ゆっくり、繰り返し発音しましょう。

」…すぼめた唇を瞬間的に開口することで、口輪筋(唇周りの筋肉)を刺激。
」…舌の奥の筋肉を使う発音。
」…舌先を上あごに付けて舌内部の筋肉を使う。

info

白ゆりグループ(株式会社メディカルシャトー)

■本社
住所:北海道札幌市中央区南9条西7-1-28
電話:011-511-1023
■函館本社
住所:北海道函館市美原2-50-2
電話:0138-34-3231


施設のサービス
●グループホーム
●有料法人ホーム
●サービス付き高齢者向け住宅

在宅の方向けサービス
●ケアプランセンター
●訪問看護リハビリステーション
●デイサービスセンター
●ショートステイ
●ヘルパーステーション


より詳しい情報は白ゆりグループホームページをご覧ください。
https://www.shirayuri.gr.jp/

RANKING よく読まれている記事

更年期 終わりのサイン
健康と食
更年期の「終わりのサイン」って?更年期後、心と体に起こること
閲覧数 61,187
美とおしゃれ 趣味と教養
-5歳は若返る!? 50代からの正しいメガネの選び方
閲覧数 33,071
ごぼう茶
健康と食
美容に良いと話題のごぼう茶!効果や効能は?副作用はある?
閲覧数 21,950
美とおしゃれ
おすすめ キレイな50代女性がやっている10のこと!内側から滲み出る魅力もご紹介
閲覧数 20,341
健康と食
おすすめ 塩抜きダイエットレシピ5選!滋味豊かな食事メニューを楽しもう
閲覧数 14,633
暮らしと生き方
いくらあげる?孫へのお祝いやお年玉
閲覧数 10,795
スパイス 効能 用途
健康と食
有名なスパイス10種類の効能と用途一覧!スパイスたっぷりカレー粉を作ろう
閲覧数 7,974
健康と食
【受験生のお弁当】当日に力を発揮するための5つのポイント
閲覧数 6,358
二重あご 髪型
美とおしゃれ
二重あごが目立たない髪型は?おすすめヘアスタイルと二重あご解消法
閲覧数 6,206
おすすめ 空の巣症候群とは?子どもが巣立った後にできる3つの乗り越え方とは?
閲覧数 6,084
美とおしゃれ
50代女性は髪が命!髪がきれいな50代女性が魅力的な理由とは?
閲覧数 4,071
暮らしと生き方 趣味と教養
おすすめ 除菌スプレーは自分で作る!おうちで簡単に作るコツ
閲覧数 3,807
健康と食
牛肉の驚くべき事実!うつ・ストレス対策に効果絶大な食材がわかる
閲覧数 3,689
美とおしゃれ
おすすめ エレガントな女性は持ち物で決まる!素敵なバッグの中身をご紹介!
閲覧数 3,504
健康と食
ゲン担ぎで合格や開運を祈願!縁起のよい食べ物22選
閲覧数 3,420
定年後 資格 女性
暮らしと生き方 趣味と教養
定年後に役立つ資格って?女性におすすめの資格と難易度一覧
閲覧数 2,808
50代 ヒール 履く
美とおしゃれ
私だってヒール履きたい!50代女性が楽にヒールを履くためのポイント
閲覧数 2,135
健康と食
暑い・寒い・眠い・痛い!?更年期の症状は十人十色
閲覧数 2,058
健康と食 暮らしと生き方 特集・連載
おすすめ 桧山タミ先生が見つけた幸せな生き方「家族のために料理できるのはほんとうに幸せなこと」
閲覧数 1,819
健康と食
おすすめ 星野由香先生が教える「ほぐピラ」メソッド
閲覧数 1,686
もっと見る

今が定期購読を始めるチャンス!

表紙
表紙

めりぃさん
発行:ては〜とホールディングス株式会社

めりぃさんアプリをダウンロード→会員登録して無料定期購読をはじめよう! 会員特典0円

めりぃさん
発行:ては〜とホールディングス株式会社

毎日の暮らしや健康ライフをサポートする情報誌「めりぃさん」を定期購読しませんか?めりぃさんアプリをダウンロードして会員登録頂くと、特典として、年6回発行される情報誌めりぃさんを永年無料でご自宅までお届けします。ぜひこの機会に、めりぃさんアプリからお申し込みください。

または、お使いのケータイにめりぃさんアプリを無料で簡単にダウンロード

QRコードが読み込めない場合はApp StoreまたはGoogle Playで「めりぃさん」と入力して検索してください。

「iPhone」の方は
こちらから

App Storeからダウンロード
App Storeのqrコード

「Android」の方は
こちらから

Google Playで手に入れよう
Google Playのqrコード