服の不自由を改善! グッドデザイン賞を受賞した「アームスリングケープ」開発の歩み|坪田康佑さん【前編】
グッドデザイン賞を受賞した「アームスリングケープ」の開発には看護師としての視点でビジネスマインドを発揮した坪田康佑さん(写真左)の活躍がありました。一人の声を仲間とともに形にし、市場をとらえた坪田さんが見つめるケアの未来を考えます。前編では、アームスリングケープをつくったきっかけを紹介。
写真右は、株式会社ケアウィル代表取締役の笈沼清紀さん。父親の介護経験や母親が洋裁の先生をしていたことが起業の原点と話す。坪田さんのビジネスでのよきパートナー。
「不自由なのは身体ではなく服」の発想から生まれた
坪田さん:2021年にグッドデザイン賞を受賞したアームスリングケープは、一人の当事者の声から生まれました。代表取締役の笈沼が「体が不自由じゃなくて服が不自由なんだ。服を変えていくんだ」とプレゼンテーションし、最優秀賞を受賞したテレビ番組を見たMさんからの問い合わせがきっかけでした。服にどのような不自由があるかヒアリングをしていた際、彼女自身、石灰沈着性腱板炎(※)という肩の疾患を患っており、診察や治療を受けるときに肌があらわになったままの姿で待合エリアにいるのが恥ずかしいし寒い。また、自宅では独力で装着できない・・・という悩みを抱えていることがわかりました。それを聞き、実は同じように悩んでいる人たちがたくさんいる、つまりそこに広い市場があるのではないかと感じたのです。
笈沼は患者さん・利用者さんをパートナーとしてビジネスを展開し、対する僕は医療従事者・提供者側のほうにニーズがあるのではないかという仮説を立て、鍼灸師、指圧師、整形外科医、さらに100人以上の訪問看護師・病棟看護師からの声を集めました。試作を繰り返し、彼らからのフィードバックをもらいながらブラッシュアップしていきました。
※:肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じる事によって起こる肩の疼痛・運動制限。
後編は2月5日公開予定!
坪田康佑さんのmyHistory
10代
慶應義塾大学看護医療学部で学び、病院以外にも看護師の活躍する場があることを知る。
20代
アメリカに留学しMBAを取得。帰国後はコーチング会社に勤務。
30代
慶應ビジネスコンテスト受賞後、起業や大学院進学を経てグッドデザイン賞受賞。
現在
日本男性看護師会の活動や博士論文執筆を進めながらケアウィルで新商品開発中。
老老介護で知っておきたいことのすべて/著・坪田康佑(アスコム刊)
介護で誰もが悩むことについて解決する介護の入門書。
●この記事は『めりぃさん』2023年12月10日発行号に掲載された内容を再編集しています