【医師監修】食生活の見直し 若々しい体づくりは「腸」から!
最新の研究からわかった「老化」と「腸」の関係や、若々しい体をつくるための腸が喜ぶ食習慣のポイントについて、医学博士の江田証先生にお話を聞きました。
ご飯を中心にいろいろな食材を食べる
腸内細菌は食べるものの多様性に応じて種類も多くなります。炭水化物、ビタミン、たんぱく質、食物繊維などの食材をバランスよく食べることが重要。腸内細菌の種類が減ると、免疫力も低下し、腸の老化が進んでしまいます。
食物繊維と発酵食品は積極的にとる!
根菜類やキノコ、キャベツやほうれん草などは水に溶けない不溶性の食物繊維が多く、腸の動きを活発にする効果が期待できます。また、海藻類、大豆などの水溶性の食物繊維は「善玉菌」を増やし、腸の動きも促進します。
筋力を維持するには海藻がおすすめ
日本で行ったとある調査で、長寿の方の腸内には筋肉の萎縮を抑える「酪酸菌(らくさんきん)」が多くいることがわかりました。日本人は海藻を分解する酵素を持った腸内細菌を持つ人が多いため、筋肉をつけるのに海藻はうってつけの食材なんです。
お腹の弱い方はFODMAP食に注意!
牛乳、果物やハチミツなどの食材はFODMAP(フォドマップ)と呼ばれる、小腸で吸収しにくい糖質類です。そのため、過敏性腸症候群の方や高齢の方が摂取し過ぎると、腸が過敏になってしまうことも。一般的に体によいと言われる食材もあるので注意しましょう。
甘い食べ物と間食は控えめに
砂糖や果糖の多いジュースは過剰にとると、悪玉菌が増殖して腸内環境が悪化してしまいます。また腸は空腹時に食べ物の残りカスや有害な細菌を体外に排出するため、間食のし過ぎで腸の運動を妨げないことも大切です。
夕食は寝る前「3時間前」にすませる
眠る前に胃を空にすることで、胃の掃除を促すホルモンが分泌され、腸の動きが活発になります。そのため、眠る3時間前には夕食を終えるようにしましょう。難しいときは脂肪や油の少ない消化のよい食事を心掛けてみて。
最新の研究で「老いと腸」の深い関係が明らかに!
「老化という現象は、体が慢性的な炎症状態になって、細胞や組織が傷つくことで起きることがわかってきました。また、その炎症と腸内細菌が関係していることも明らかになってきたんです」と話す、江田クリニックの江田証先生。
厚生労働省が実施した便秘の頻度に関する調査(※)によると、80歳以上の長寿の方には快便の方が多いことがわかりました。便秘の人は快便の人よりも、血管が硬くなる「動脈硬化」が増えるため、それによって脳梗塞が起きやすくなるというリスクがあります。その他にも、心臓の血管が詰まる心筋梗塞や狭心症などのリスクが高くなることも判明しています。
腸で大切なのは「腸内細菌」食事と生活習慣で大きく変化
腸内細菌とは腸に住む菌の総称。腸内には約1000~100兆個もの腸内細菌がいます。この腸内細菌の多様性がなくなると、免疫や代謝機能、生理作用の低下を招きます。
「腸内細菌の構成は高齢になればなるほど個人差がでます。食べるものに偏りのある人よりいろいろな種類の食材を食べている人の方が腸内細菌の種類が多様になるんです」と江田先生。
また、食事以外の生活習慣も腸に大きく影響すると江田先生は言います。「腸と脳は実は関係性が深いんです。例えば幸せな気持ちを感じる際に出るドーパミンや、睡眠のリズムを安定させるセロトニンなどのホルモンは、食物から摂取したたんぱく質を腸内で分解してできたアミノ酸を原料につくられます。腸内細菌のバランスによって分泌されるホルモンの量が変わるため、心の健康にも腸は影響しているんです。また、脳がストレスを感じると腸管を傷つけるホルモンが放出され、腸管の炎症を進めるとも言われています。そのため、質のよい睡眠やストレスをためない生活も腸活には重要なのです」。
江田証先生
えだ・あかし●江田クリニック院長。医学博士。『老いと腸 名医が教える老けない人の腸活術』 (産業編集センター)など著書多数。
※2001~2019年 国民生活基礎調査「日本人の年代別の便秘頻度」