医師が教える!猛暑を乗り切るための夏バテ対策
夏の体調不良は油断大敵。ちょっと夏バテしているだけ…と不調をそのままにしておくと、
気付いたときには重度の熱中症になってしまう可能性も。今回は医師の瀧川拓人さんに
夏バテと熱中症の危険性と、夏バテ対策について伺いました。
取材・文/黒澤あすか イラスト/後藤知江
夏の体調不良は早めの対策が吉
悪化すると命に関わる危険も
る日本。暑い日が続き、体がだるい、食欲が出ないといった、いわゆる〝夏バテ〟になった経験はありませんか? 今回なぜ夏にこうした体の不調が起きやすくなるのかを、みどりクリニック長沼の瀧川拓人先生に伺いました。
「夏は体調不良のきっかけが発生しやすい季節なんです。夏に体調を崩すきっかけは大きく2つあります。一つは脱水が起きやすいため、もう一つは睡眠の質が落ちやすくなるためです。夏は汗をかくので体が水分不足になりがち。その状態で、夜にクーラーをつけずに寝ようとすると暑さで眠れず、睡眠が浅くなることで体に倦怠感が出ます。すると食欲も落ち、さらに脱水症状が進む… こうして良くない生活のサイクルができてしまうんです」と瀧川先生。
誰でもなりえる夏バテですが、ただの体調不良と考えるのは危険。夏バテの症状を放置すると、命に関わる症状や病気につながるリスクがあると、瀧川先生は話します。
「例えば夏バテで食欲が落ちたことでビタミン不足になった場合、足もとがおぼつかなくなるなど運動機能に影響が出て、進行すると後遺症が残ってしまうこともあります。また、脱水症状が進むと当然、熱中症になります。熱中症は夏バテと違い病気です。ひどい場合には意識障害を起こし、亡くなってしまう可能性もあります」。
一番大切なのは水分補給
高齢者や子どもは特に注意!
こうしたリスクを踏まえて、まずは夏バテにならないよう対策をすることが大切。一番重要なのが水分補給で、その後は水分をとったうえで食事をしっかりとって、睡眠の質を上げることが重要です。夏バテ対策の方法は26ページからご紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。また、夏バテは自分では気が付けないことも多いので、左ページのチェックリストで症状がないか確認しましょう。
ちなみに、医師から病気治療のため水分を控えるよう指導を受けている方や、心肺機能の衰えている高齢者の方、小さなお子さんなどは、体力的な予備力がないため夏バテになりやすい傾向にあります。本格的な夏がくる前に、医師に相談して対策を検討しましょう。
より詳しい情報は白ゆりグループホームページをご覧ください。https://www.shirayuri.gr.jp/
夏バテのセルフチェックリスト
実は自分でも気が付かないうちに夏バテになっているかも。下記チェックリストで当てはまる数が多いほど、夏バテの可能性が高くなります。また症状によっては熱中症になりかけている場合もあるので、危険な症状が出ていないか確認しましょう。
✅ なかなか眠れない,眠りが浅い
寝る際に部屋の温度が高すぎると、なかなか寝付くことができず睡眠不足になってしまうことがあります。また、寝る前に暗い部屋で携帯やパソコンを見てブルーライトを浴びたり、寝る前にアルコールを摂取したりする行為も寝付きを悪くする原因になります。
✅ 寝ても疲れがとれない,体がだるい
寝苦しさによる睡眠不足や、外と室内との気温差によって自律神経が乱れて体が疲れやすくなっているなど、原因はさまざま。食事をあまりとれていない人の場合、ビタミン不足が原因になっていることもあります。
✅ 食欲がわかない,胃がもたれている
脱水状態が進むと食欲がなくなることもあります。脱水状態になると血液量が減り、血圧が下がるため必要な栄養素が体に行き渡らなくなります。それによって消化器官の機能が低下して、消化不良や食欲不振につながってしまうことも。
✅ のどが渇いている
水分が不足しているサイン。水分が不足すると十分な量の唾液が分泌できず、口内が乾燥してのどの渇きを感じます。のどの渇きは、別の病気の初期症状である可能性もあるため、長期間症状が続く場合は医師に相談しましょう。
こんな症状は「熱中症」の危険性アリ!
✅ 立ちくらみやめまいがする
✅ こむら返りがおきている
✅ 吐き気がする
✅ 体に力が入らない、歩くことができない
✅ 気分が悪くぼーっとする
✅ 体がけいれんしている
✅ 足がしびれている
複数当てはまる方は、病院またはかかりつけ医を受診してください。
教えて瀧川先生!
夏に負けないからだをつくる6ステップ
夏バテを防止するための6ステップをご紹介!すべてクリアして健康的に夏を乗り切りましょう。
1:水分補給を欠かさない
水分をとるなら、スポーツドリンクや経口補水液がおすすめ。体の水分(体液)は、水の他に塩分をはじめとした電解質と呼ばれる成分でできています。電解質は汗をかくと失われるため、塩分の入ったドリンクを摂取して体液の濃度を一定に保つことが大切です。
2:快適な室温を維持する
夏は無理せずにクーラーをつけましょう。扇風機を使うのも良いですが、直接体に風を当たると脱水が起きやすくなるため、注意が必要です。寝苦しくない温度を保つことを心掛け、風は直接体に当たらないよう風向きを調整するようにしましょう。
3:よくかんで食べる
食事はよくかんで食べることで、唾液が分泌されて胃腸の動きが活発になります。逆に、あまりかまない状態で食事をとると、胃などの消化器官に負担がかかり、うまく栄養が体内に吸収されなくなってしまいます。いつもの食事でぜひ意識して行ってみましょう。
4:食欲がないときは好きな食べ物を
食欲がないと感じたら、まずは好きな食べ物を食べてみましょう。「冷たいものを食べ過ぎない」「消化吸収の良い食べ物が胃に優しい」など、気にし過ぎるのは良くありません。まずは食事をとることが優先。食べたいと思うものをよくかんで食べましょう。
5:寝不足の時は“15分昼寝”
なかなかうまく寝付けない方や、睡眠時間がとれない方は、昼間に15分ほど昼寝をするのがおすすめ。睡眠不足のままでいると、ストレスがたまり疲労感や倦怠感も出てきます。短時間の睡眠をとると、睡眠不足も軽減されて頭もスッキリして仕事の効率も良くなりますよ。
6:長時間の入浴は下半身浴で!
長時間の入浴は注意が必要。入浴は体力を使い、汗も出るため脱水になりやすい状態です。湯船に入る場合は、40度ほどのお湯に10分程度入る下半身浴にしましょう。高温のお湯は血圧が上がって、夏でも部屋との温度差でヒートショックを起こすことがあります。
栄養満点!夏に食べたいおすすめ食材
瀧川先生のおすすめは、豚肉・枝豆・ブロッコリー・うなぎの4つ。豚肉は疲労回復に欠かせないビタミンBが豊富。ブロッコリーはβ-カロテン、ビタミンCやカリウムなど栄養の宝庫です。枝豆はビタミンB1、B2が多く、うなぎはビタミンB1、B2、Aなどが含まれています。ちなみにビタミンBとCは水に溶けやすいため、焼き・蒸し・炒め調理がおすすめです。香りで食欲を増進するシソや生姜、ビタミンB1の吸収を高めるアリシンが入ったねぎやニンニクなどを一緒に食べるのも◎。食欲が減退しがちな場合は辛みや酸味をプラスするのも効果的!