身近な人が亡くなった…その時に備えて「グリーフケア」を知っておこう
「グリーフケア」とは、“大切なものをなくす”という辛い経験を癒すケアのこと。下記のような経験をして毎日悲しみや辛さ、虚無感を感じているとき、グリーフケアを取り入れるのがおすすめです。
こんなとき、グリーフケアを考えて
- 身近な人や大切な動物が亡くなった
- 大好きな芸能人が引退した
- 退職などで「肩書き」を失った
- 長年住んでいた家を出た
グリーフケアは、上記を含む様々な「喪失体験」をケアすることで、心の成長を促すものです。そこでこの記事では、突然の喪失体験に心がポッキリ折れないよう、覚えておきたい「グリーフケア」の概念や方法についてお伝えします。グリーフケアについて知っておけば、自分が辛いときはもちろん、身近な人が喪失体験をしたとき、その人の心を支えるヒントにもなりますよ。
グリーフケアとは?
グリーフという言葉には、英語で「深い悲しみ」という意味があります。
日本では、核家族化や、家ではなく病院で親族を看取る人が増えた影響などで、“残された側の心をケアすること”の大切さが指摘されはじめ広まりました。そのため、グリーフケアは「大切な“人”を亡くした体験を乗り越えるためのもの」という文脈で語られることが多いです。
しかし、実際のグリーフケアはもっと幅広く『喪失体験を乗り越える』という目的を持っています。喪失体験とは、人間に限らず自分にとって大切なものをなくす体験のこと。つまり、グリーフケアは人を亡くしたときだけに適応されるものではありません。
▼さまざまな喪失体験の例
- 大切だった人や動物の死
- 大好きな芸能人の引退
- 定年退職で「肩書き」を失う
- 愛着があった仕事を辞める
- 事故や病気で身体の一部を失う
- 長年住んでいた家を出る
- 夢を諦める
- 大切な人の性格が変わってしまった……など
グリーフケアはいつから始める?
グリーフケアを始める時期は、定められてはいません。
ただし、自分の大切な人、もの、肩書きなどの中には「もう少ししたら自分から離れるかもしれない」と予想できる場合もあります。例えば、大切な人が末期がんを患っている、子供が結婚を控えて家を出る予定がある、60歳で退職することが決まっている……などの場合です。この場合、予想できた段階から少しずつ心の準備(グリーフケア)をすることができます。
しかし人の死はもちろん、仕事やものがなくなるときも、多くの場合は予想することができません。ある日突然、喪失体験をした場合にはなるべく早めにグリーフケアをおこなうのが理想です。
喪失体験は、身体と心の重大な病気に繋がる可能性がある大きな出来事。そのため、できるだけ早い段階でグリーフケアを始めることは、精神的にはもちろん身体的健康を維持するために有効です。
うつの症状が出たら、早急にグリーフケアを検討しよう
喪失体験後、うつの症状が気になる場合は早急に心療内科・精神科やカウンセリングに行かれることをおすすめします。
▼主なうつの症状
- ゆううつ、なにをしても楽しくない
- 今まで興味があったこと、楽しかったことになにも感じない
- 落ち着きがない、イライラする
- 食欲がない、または暴食してしまう
- 眠れない、または寝すぎてしまう
- 倦怠感、疲労感がある
- 自分を責めたり、自分に価値がないと思う
- 今まで普通にできたことができなくなった
うつの症状は人によってさまざまなので、上記以外のことでも気になることがあれば専門家に相談しましょう。また、上記のような症状が2週間以上続いた場合に「うつ状態」「うつ病」と診断されます。
グリーフケアをするとき、できればグリーフケアを専門とするカウンセラーのもとでおこなうのがおすすめです。ただし、カウンセラーも人であり、相手によって自分に合う人、合わない人がいます。“ご自身にあう人を探す”という心構えでカウンセラーを探すのが、いいカウンセラーを見つけるコツ!
グリーフケアって、なにをするの?
グリーフケアの過程で大切なことは、“失った”という事実を認め、自分の中にある感情と向き合うこと。そして、必要なときは周りの人や専門機関を頼ることです。
「喪失体験を受け入れる」ということ
人によっては、数年という時間が必要かもしれません。絶望で動けなくなることもあるかもしれませんが、辛いからといって喪失体験と向き合うことを放棄すると、いつまでも事実を受け入れられず、結果的には長い間苦しみ続けていたということになりかねません。
泣きわめくこと、思い出に浸ること、引きこもること……そして、お葬式や死後の処置(エンゼルケア)なども、事実を受け入れるために必要な過程です。
苦しみながら一人でいろいろ考えた末に、自然と「なくしたものが私の人生に教えてくれたこと」が見えてくることもあります。
「周りの人を頼る」ということ
喪失体験による辛さ、悲しみが大きいと、一人では抱えきれないことがあります。そんなときは、一人で悩まず周囲の人やカウンセラーなどの専門家に頼りましょう。
誰かに話し、共感されるだけで気持ちが穏やかになることもあります。また、グリーフケア専門のカウンセリングでは、同じような状況の人とグループワークをする療法を取り入れているケースも。これは、喪失体験について話しをすることで、辛い体験を「思い出」として受け入るためのものです。
グリーフケアの注意点3つ
グリーフケアは、目で見えない心や感情と向き合います。間違った方法でおこなうと状況が悪くなる可能性があるため、3つの注意点を抑えて、正しいグリーフケアを目指しましょう。
「励まし」や「問題解決」はしない
気分が落ち込んでいる人に対して、「励まし」や「問題解決」は時に状況を悪化させる原因になります。喪失体験の当事者である場合は、励ましたり、論理的に問題解決を提案するクセがある人は避けるのがベター。
喪失体験をした人を“支える側”の場合、「頑張ろう」「大丈夫だよ」「〇〇すれば気持ちが晴れるんじゃない?」などの励まし・問題解決の提案は、言わないように意識すること。当事者にとっては無責任に聞こえ、プレッシャーさえ感じさせてしまうかもしれません。
励ましや提案ではなく、気持ちに寄り添うことを大切にしましょう。グリーフケアで大切なのは、喪失体験を“忘れる”ことではなく“受け入れる”ことだからこそ、一緒に苦しんであげることが当事者の支えになることもあります。
「右肩上がりでよくなる」と思わない
人の心には、波があります。グリーフケアの過程で「最近は調子いいな」と思っても、喪失体験をフッと思い出して苦しい感情に引き込まれることもあるかもしれません。
「グリーフケアをしているから、右肩上がりでよくなるはず」と信じていると、気持ちが落ち込んだときにより深くガッカリしてしまいます。当事者も、当事者を支える側も、過度によくなることを期待しないようにしましょう。
「自分だけ」で頑張ろうとしない
喪失体験は、うつ病をはじめ身体的な病気の原因になります。そのため、一人で抱えきれないとき、家族ではケアが難しいときは「自分でなんとかしよう」と思わず、カウンセラーや精神科・心療内科の医者を頼りましょう。知識がない状態で無理にケアをすると、状況が悪くなることがあるからです。
プロのカウンセラーなら、喪失体験や自分の気持ちを受け入れてくれた上で、喪失体験を“ただただ悲しい出来事”ではなく、“人生の中の重要な経験の1つ”などの「他の視点」からみる手助けをしてくれます。
「病院やカウンセリングに行くハードルが高い」「この状態で行ってもいいのかな?」と思ったら、その時がカウンセリングや病院に行くタイミング。なるべく早く専門家に話を聞き、問題なければそれでOK。手遅れになる前に動きましょう。
「グリーフケア」で自分と“大切な人”を守ろう
いつ、訪れるかわからない喪失体験。グリーフケアを知っていれば、自分の喪失体験のときはもちろん、周りの人が苦しんでいるときにも、どう行動するか、支えるためにどうすればいいかを決めるヒントになるでしょう。
自分自身が正しく立ち直るため、そして周りの人を正しく支えるために、もしものときはグリーフケアを思い出してくださいね。