受験生をもつ親の「怒り」のコントロール術
内科医師の春田です。この原稿を書いているまさに今、私の子どもは入学試験の真っ最中。受験までの1年は、本当に大変でした。私の受験ははるか昔ですが、自分の受験のときよりも胃が痛い…!
応援するあまり、子どもに対して怒鳴りたくなることもしばしばありました。しかし、せっかく希望の学校を目指して頑張る受験勉強中、家の中の雰囲気が悪くなったら本末転倒ですよね。
そこで、受験生をもつ親御さんに役に立つ、親のためのアンガーマネジメント(怒りのコントロール)についてご紹介しましょう。
親が怒っても子どもの成績は上がらない
なにかに対して怒るとき、その理由は多くの場合「思い通りにいかないから」。しかし、怒ったところで子どもが自分の思い通りになるわけではないばかりか、むしろ成績や子どものメンタルに悪影響を与える可能性もあります。
例えば、あなたが子どもが勉強しないことに対して怒っているとき、あなたの心には「子どもに勉強してほしいのに、してくれない」「怒れば勉強してくれるはず」という想いが少なからずあるはずです。
というのも、怒りを露わにするときは「怒ることで状況を変えたい」と思っているときに限定されます。「年を取りたくない」と思っても、加齢は「変えることができない」とわかっているので怒りは湧きません。しかし、子どもが勉強しなかったら「怒ることで子どもは勉強するかもしれない」と思って、怒りがわくのです。
しかし、そんな想いとは裏腹に「怒り」が問題解決に貢献することはほとんどありません。あなたが怒ったら、子どもはしぶしぶ勉強机に向かうかもしれませんが、集中して勉強することはほとんどありません。それは自分がやる気になったタイミングではないですし、言われてやっているだけだからです。
子どもは子どもなりに、「あと〇分だけ、テレビを見たら勉強を頑張ろう」「今日ゲームを見るために、今週はいつもより〇時間多く勉強した!」と計画的に過ごしているのかもしれません。そのような状況を考慮せず怒ってしまえば、子どものやる気が薄れるのも当然。大人でも、怒られながら何かを頼まれるとより、やさしく穏やかに頼まれたほうが気持ちがいいものですよね。
怒って子どものメンタルを傷つけるより、怒りをコントロールして冷静に子どもを応援する方向にシフトしましょう。
気持ちを落ち着ける「アンガーマネジメント」4つのコツ
ここからは、アンガーマネジメントの4つのコツを見ていきましょう。読んだらすぐ実践できることばかりです。
①怒りたくなっても6秒は我慢する
アンガーマネジメントには「6秒ルール」があります。これは、怒りの感情のピークは6秒しか続かない、というもの。カッとしたとき、とにかく6秒は我慢します。大きく深呼吸してもいいでしょう。一時的な怒りであれば、6秒我慢することで感情が落ち着くはずです。
②怒りを点数化する
怒りの感情が出てきたとき、その怒りの度合いを点数にします。「今の私の怒りは10点満点中3点」「この怒りは8点」といった具合です。このクセをつけることで、自分の怒りを客観的に分析できるようになります。
慣れたら「3点だから、黙って様子を見よう」「8点。こんなに腹が立つのは睡眠不足だからかも」などと分析できるようになり、冷静に現状と向き合えるようになります。
③怒った「その後」を考える
怒ってしまいそうなときに「ここで怒ったら、その後どうなるのか」について考えます。単純に「ここで怒ったらいい結果になるのか」「それとも悪い結果になるのか」について考えるだけでも構いません。
「子どもと喧嘩になる」「子どもを傷つけてしまう」などいい結果に繋がらない予想ができたら、その瞬間は声を荒げずに済むはず。冷静になったら、どのように伝えればいい結果になるのか考えてみましょう。
④「怒り」の日記をつける
「自分がどのようなことに対して『怒り』の感情を持つのか」について日記を残しておきます。文字を書く時間で怒りを分析することができ、日記を見返すことで自分の感情の“クセ”を知ることができます。
「子どもが勉強せず遊んでいた」「ゲームは1時間だけ、と決めたルールを守ってくれなかった」という具合で、自分が怒ってしまったときの状況をノートに書きましょう。そうすることで自分の怒りを客観的に見ることができます。なかには「こんな些細なことで怒る必要はなかったな」「次は、怒らず論理的に話してみよう」と考えられるかもしれません。
「怒り」を抑えて受験を実りあるものに
怒りをコントロールして穏やかに過ごすことは、受験の準備に集中するべき子どもにとってはもちろん、親自身にとっても精神的負担が減るなどメリットが大きいです。子どもも親も、受験期間を後悔なく乗り切るために、今回ご紹介したアンガーマネジメントを継続してみてくださいね。
内科医
春田 萌
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医
大学病院、二次救急病院、在宅医療を経験。