【生き方特集 1】樹木希林さんからの手紙 人生上出来!と、こらえて歩こう
樹木希林さんがお亡くなりになってからもうすぐ2年になろうとしています。亡くなられてから樹木さんの言葉に感動し、心のよりどころにされる方がたくさんいらっしゃいますが、創刊号では、樹木さんの手紙を通じて私たちのこれからの生き方を考えていきます。
樹木希林 (きき きりん)
女優。1943年東京都生まれ。最初の芸名は「悠木千帆」。ドラマ「七人の孫」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「夢千代日記」「はね駒」などの人気ドラマに出演。フジカラーのCMも好評を博す。映画「万引き家族」ではカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。2018年9月15日死去。享年75歳。著書『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文藝春秋)が150万部突破。
樹木希林さんが、交流のあった方々に直筆の手紙を送っていたことは生前あまり知られていませんでした。
亡くなった1週間後に放送されたNHK「クローズアップ現代+」と、その一部を深く掘り下げた長野放送局「知るしん」の2つの番組で、樹木さんと一般の方との手紙を通じた交流が放送されて大きな話題となりました。
そのなかでもとりわけ注目を集めたのが、成人式を迎える若者に向けた手紙です。長野県上田市にある「無言館」という太平洋戦争で亡くなった学生の作品を集めた美術館へゲストとして呼ばれたのが樹木さんでした。
事前にアンケートを送り、そこに書かれた内容に合わせて、まだ見ぬ若い人たちに向けた手紙を書き、当日手渡していました。今回ご紹介しているのはそのなかの3通です。
①の手紙は看護師を目指す学生に送ったもの。カナダの老人ホームの例を出し、看護師は少ないもののその人に合った道具が配置され、入所者自身の自立心が育つように考えられていたほうがピンピンしててコロリと死ねると書いています。
②の手紙は教師を目指す学生に向けたもの。法華経の一節を紹介しながら、それぞれの性質に耳を傾けること。教育とは寄り添ってともに育つことだと、教えることの多い親世代にも教育の持つ意味を語りかけています。
③の手紙では、60歳を過ぎるまで自分が役者でやっていくという気持ちが定まっていなかったという意外な告白をしています。
人生の後半、かつては持っていたはずの夢を諦めてしまい、いまさらどんな夢を持ったらいいのかと思い惑うことも多くなるなかで、何歳になっても自分の夢をもう一度持って、残りの人生を楽しむことの大切さを伝えてくれています。
実は樹木さんが手紙を書き始めたきっかけは60歳を過ぎて乳がんになってから。それまでの人生で人を傷つけたことがあり、その罪滅ぼしで手紙を書き始めたと語っています。
年齢を重ね、どれだけ大女優としての評価を得ようと、決しておごらない生き方を貫き、一度関わった人をとても大切にしたのが樹木さんでした。
みんなが先生であり、友達だと考えていた樹木さんにとっては、生きている人たちすべてが生かされる人生を歩んでほしいという願いがありました。優しさと時に厳しさもあわせ持つ樹木さんの手紙は、何かで立ち止まった時に、どう生きていけばいいのかという自分なりの答えを探すヒントにあふれています。
NHK『クローズアップ現代+』+『知るしん』制作班 著 本体 1300円+税(主婦の友社) ご紹介した手紙を含む11通の手紙と交流が紹介されています。