暑い・寒い・眠い・痛い!?更年期の症状は十人十色
更年期の症状は、その人その人によって全く違います。あまりメジャーではない症状が出た方は、この症状は更年期なのか、それともなにか病気が原因なのかと不安になることでしょう。更年期の症状は多彩ですので、あまり知られていない症状も存在します。どんな症状が見られるかチェックしてみましょう。
更年期は閉経の前後5年間の期間をいいます。早い人で30歳代、遅い人で50歳代で更年期が始まります。下記の症状は、更年期によくみられる症状になります。
- 疲れやすい
- 肩こり、腰痛、手足の痛み
- 不眠症状(寝つきが悪い、眠りが浅いなど)
- 頭痛、めまい
- 汗をかく
- 手足の冷え
- 気分の落ち込み、イライラ
- 皮膚のかゆみ、乾燥
これらの症状は、「更年期症状」と呼ばれ、年齢とともに症状の内容が変わったり、程度が変化したりします。中には、日常生活に影響が出る場合もあります。
「更年期症状」と「更年期障害」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。どちらも更年期に起こる症状のことを指します。そしてこの2つには、下記のような違いがあります。
更年期症状 |
更年期障害 |
更年期に現れるさまざまな症状の中で、病気やケガなどが原因でないもの |
更年期症状の中で、日常生活に支障をきたすもの |
このように、更年期症状がひどくなった状態が更年期障害と呼ばれます。
更年期症状と更年期障害では、身体面はもちろん、精神面·社会面への影響の程度がまったく違ってきます。
例えば、更年期の代表的な症状である「ホットフラッシュ」の場合、汗ばむ程度の症状から、滝のように汗が流れ出すような症状まであります。
汗ばむ程度なら日常生活への影響は少ないでしょう。しかし、滝のような汗が突然吹き出す場合には、外出へのためらいや仕事への支障、夜間の睡眠の中断など、さまざまな面に影響を与える可能性が高くなります。
また、「疲れやすい」という症状も、だるさを感じる程度から、家事や仕事に支障をきたすものまで、程度はさまざまです。
更年期の症状は程度の差が激しいだけでなく、症状の種類も幅広いです。一般的な症状のほか、下記のようなあまり知られていない症状が出現する場合もあります。
- 吐き気、胃もたれ、食欲低下
- 目の乾燥感(ドライアイ)
- 手指のしびれ、こわばり
- のどの違和感
- 膣の乾燥感、かゆみ、性交時の痛み
- 物忘れが増える、物覚えが悪くなる
これらの症状は、一般的な更年期の症状に比べて頻度が少ないため、更年期によるものだという認識がない場合があります。日常生活に支障をきたしていても、加齢や疲れによるもので、仕方のないことと諦めてしまう場合もあるでしょう。
また、症状自体の辛さだけでなく、周囲から理解を得にくく、相談もしづらいことが更なる辛さを呼ぶ可能性があります。
しかし、これらの症状は治療を受けることで、症状の緩和や改善が期待できます。
更年期障害は、下記のような薬物療法や心理療法によって、症状を軽くしたり、改善できる場合があります。
■ホルモン補充療法(HRT)
女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」を補充する治療法です。エストロゲンの欠乏によって起こる、のぼせや発汗などのホットフラッシュ、不眠症状、関節痛、気分の落ち込み、性交痛などの症状の緩和に効果的です。
また、エストロゲンの低下によって起きやすくなる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」や「動脈硬化」の予防ができるほか、「アルツハイマー病」の発症を遅らせる効果があることがわかっています。
■漢方療法
漢方薬を使った治療法です。「婦人科三大処方」とも呼ばれる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)·加味逍遥散(かみしょうようさん)·桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を中心とした処方が用いられます。漢方は、効き目が緩やかなため、8~12週間の服用が必要です。副作用が少なく、多彩な症状の緩和や改善に効果的です。
■その他の薬物療法
気分の落ち込みや不安感などの精神的な症状が強い場合は、抗うつ薬や向精神薬などを使った内服治療が行われることがあります。
■カウンセリング·心理療法
更年期の症状は、ホルモンの変化だけが原因ではなく、加齢などの身体的な変化や生い立ち、性格、家庭や職場·地域でのストレスなどが一因になっている場合があります。そのため、薬物療法だけでなく、カウンセリングや心理療法などの治療が効果的な場合があります。
よく知られている症状からマイナーな症状まで、さまざまな更年期の症状をご紹介しました。これらの更年期に起こる症状の中には、なんらかの病気が原因である可能性もあります。
頭痛やめまいなら、脳の病気やメニエール病の可能性もありますし、手指のこわばりなら関節リウマチの可能性もあります。
そのため、なにか異常を感じたら、まずは病院で診察を受け、病気が原因でないことを確認すると安心ですね。特に更年期以降は病気の発症率が上がりますので、定期的に健康診断や人間ドックを受けることをおすすめします。
「この記事を書いた人」
広田沙織
看護師として総合病院の産婦人科、婦人科クリニックに勤務し、
医療ライターとしても多くの執筆活動を行う。
プレ更年期を感じつつ、仕事に子育てに奮闘中。