乳がん検診のススメ 女性医師が解説します
女性内科医師の春田です。今回は、前回の続きとして乳がんと検診とセルフチェックについて解説します。
前回、乳がんは早期発見すれば怖い病気ではないことをお伝えしました。
そこで大切なのは乳がん検診です。日本における乳がん検診は40歳以上を対象に、2年に1度受診することが勧められています。ですが、実際の受診率は2016年の調査で44.9%しかありません。アメリカやニュージーランド、韓国などでは60%以上の受診率であることと比較すると、まだまだ日本での乳がん検診受診率は低いと言わざるを得ません。
私自身が初めて乳がん検診を受けたときのことを振り返ると、きっと皆さんが心配に思われているのはこんなことではないかと思います。
- 上半身裸になるなんて恥ずかしい
- 胸をはさんで検査するなんて痛くないの?
- 視触診ってどんなことをするの?
- 男の先生に胸を見られるのは嫌だなあ
乳がんは基本的に外科の先生が診察する病気なので、医師とはいえ、私自身も自分が検診を受けるまでは具体的にどんな風に検診が行われているのか知りませんでした。
ですが、患者さんに検診を勧めている以上、私も患者さんの見本にならないといけません。それに、私自身が検診を受けて、患者さんに実際はどんな感じか説明ができれば、きっと安心して検査を受けてもらえるだろう、そう思って乳がん検診を受けてきました。
まずは一般的に検診で行われているマンモグラフィーですが、こちらは上半身裸になって検査着を着て、マンモグラフィー専用のレントゲンの機械の前に立って検査を行います。
検査するときには検査着の片方から肩を出す感じで乳房も出し、技師さんが2枚の板に乳房が挟まるように位置を調整して撮影します。少なくとも私の見聞きした範囲では、マンモグラフィー担当の検査技師さんは全員女性です。
乳房はできる限り根元まで写真が撮れるように目いっぱい2枚の板の間に入るように調整します。その際には技師さんが乳房に触れます。乳房は2枚の板でできるだけ薄く延ばすので、かなりギュッとはさまれます。痛みの程度は表現しにくいですが、自分で両方の手のひらでおっぱいをはさみ、その左右の手の距離が半分になるくらいにギュッと押した感じです。
できる限り素早く撮影するので、ギュッと挟まれている時間は長くても15秒くらいです。(技師さんが乳房をはさんで固定し、部屋の外に出て、レントゲンのボタンを押して帰ってくるまでの時間です。)
さて、次は超音波検査です。エコー検査ともよばれますが、これは上半身裸になって、胸にタオルをかけて、ベッドに寝転んで検査をします。
エコー検査は病院によって検査技師が行う場合と、医師が行う場合があり、検査技師の場合はほとんどが女性ですが、医師が行う場合は男性医師になることもあります。
片方の乳房ずつゼリーを塗って、プローブと呼ばれるセンサーを乳房表面に滑らせて、全体を観察します。プローブは狭い範囲しか見ることができないので、片方の乳房の上を上下左右に何度も滑らせて検査をします。検査時間は全体で15分程度です。
視触診は最近の検診では省略されることも多くなりましたが、医師が実際に乳房を観察したり、触ってしこりや異常がないかを診る検査です。
ベッドの上に寝転んだり、腰掛けたり、手を挙げてバンザイの格好をすることで乳房にくぼみがでてこないか、触って何かふれないか、腋のリンパ節が腫れていないか、などを見ます。
また、乳首を押して分泌物に血が混じっていないかを診ることもあります。
無症状の人を対象にした検診ではマンモグラフィーを行うのが一般的です。
マンモグラフィーの結果は写真として記録ができるので、同じ病院で検査を受ければ、以前の写真と比較して、より変化を判断しやすいという利点があります。
ただし、一部の日本人ではマンモグラフィーで異常を発見しづらい人がいます。デンスブレスト(高濃度乳房)と呼ばれる人です。
マンモグラフィーはレントゲン写真を撮り、白(乳腺)と黒(脂肪)の模様などから異常がないかを判断します。がんを疑う病変は白くうつりますが、もともと白い部分、つまり乳腺が多い人では、乳腺の白に病変の白が隠れてしまい、異常が見つけにくくなるのです。デンスブレストはアジア人に多く、40歳以上の日本人では約4割の人がデンスブレストともいわれています。
案外多いですね。検診では、結果が書かれた用紙が送られてくるだけですので、なかなか自分がデンスブレストかどうか確認できませんが、人間ドックなどでは医師から結果説明を聞くことができますので、その時に自分がデンスブレストかどうか聞いておくとよいでしょう。
私は自分の勤めている病院で乳がん検診を受けたので、同僚の男性医師による視触診は遠慮(拒否?)しました。代わりに行っているのがセルフチェックです。
セルフチェックは自分自身で乳房を触ってしこりがないかどうかを調べることです。タイミングは月に1回、生理が終わって1週間以内の乳房が柔らかい時期に行うのがベストです。乳房を鏡にうつしながら、手に石鹸やクリームなどをつけて、滑りを良くして全体をなでていきます。
乳がんを疑うしこりの特徴としては硬くて、動きが少ないこと。また押さえても痛みがあまりないことが多いです。
手を挙げることで皮膚の変化が分かりやすくなることもあります。また乳頭からの分泌物に血が混じっていないかも見るようにしましょう。毎月行うことで変化に気づきやすくなるので、マンモグラフィーなどの検診を受けていても、セルフチェックは取り入れていきましょう。
前回の春田医師の記事はこちら:乳がんってどんな病気?