受けておきたい「ピロリ菌感染」「肝炎ウイルス」検査
内科医師の春田です。医師として“受けていて損はなし”という検査があります。
それは、ピロリ菌感染と肝炎ウイルス感染の検査です。
もし陽性だった場合、これらの治療を早期から行っておくことで、将来これらの検査はもし陽性だった場合に早期から治療をすることで、将来がんになる可能性をグッと下げることができるのです。
皆さんはこれらの検査を受けたことがありますか?無ければ次の人間ドックのオプションに追加できないか検討してみましょう。
ピロリ菌の正式な名前は「ヘリコバクター・ピロリ菌」と言います。
普通胃の中は強い胃酸で守られているので、もし食べ物と一緒に細菌が入り込んでも、細菌は胃酸で殺菌されます。
ところがピロリ菌は胃酸を中和する成分を自分でつくることができ、胃の壁に感染することができる特殊な細菌。
胃がんの9割は「腺がん」と呼ばれるタイプの細胞ですが、この腺がんタイプの胃がんのほとんどが、ピロリ菌が原因であると考えられています。
ピロリ菌が胃の壁に感染すると、炎症を起こしながら、徐々に胃は「萎縮性胃炎」という状態になります。そこから腺がんタイプの胃がんは発症するのです。
ピロリ菌の感染
ピロリ菌は、大人になってから新たに感染することはほぼありません。大人は免疫機能がしっかりしているので、ピロリ菌を排除する機能が確立されているからです。昨今では、60歳以上の人は半数、50歳代の人は5人に1人がピロリ菌に感染していると報告されていますが、彼らの多くは下水道が整っていなかった幼少期に、ピロリ菌が口から入って感染してしまったと考えられています。
ピロリ菌の検査
自分が胃がんになりやすいかどうかを把握するためにも、ピロリ菌の検査は有効です。ピロリ菌の検査は、胃の内視鏡検査をしたときに胃の壁の一部を採取する方法や、血液検査、便の検査、そしてピロリ菌の反応する薬を飲んで呼気を調べる方法等があります。胃薬を飲んでいると検査に影響がある場合もあるので、検査を希望する際は、その病院でどの方法が合っているのか相談してみてください。
ピロリ菌の治療
ピロリ菌に感染していることが分かった場合、一般的には飲み薬でピロリ菌を消滅させる治療を受けます。他にも、ABC検診というものがありますが、これはピロリ菌の有無や萎縮性胃炎の有無を調べて、胃がんになりやすいかどうかを判断するものです。
ピロリ菌の感染によって萎縮性胃炎が進行すると、ピロリ菌は萎縮した胃の中で住めなくなって消えてしまうことがあります。誤解しないでほしいのは、ピロリ菌が消えたら胃がんの危険性がなくなるわけではありません。萎縮性胃炎からがんは発生するので、ピロリ菌がいなくても萎縮性胃炎があると診断された場合には、定期的に胃がん検診を受け、胃がんが発生していないかをチェックしましょう。
肝臓に炎症を起こすウイルスを肝炎ウイルスと呼びます。
肝炎ウイルスはA型、B型、C型、D型、E型の5種類がありますが、肝臓がんの発生と関連しているのはB型とC型です。
この2つは感染したときに急性肝炎を起こし、まれにウイルスが残って慢性肝炎となります。
そのまま慢性肝炎の状態が続くと肝臓が硬くなる病気、肝硬変となり、その中から肝臓がんが発生します。
肝炎ウイルスの感染
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは以下のような場合に感染します。
- ウイルスを持つ母親から生まれたときに感染する母子感染
- 血液を介した感染
- 性交渉による感染
- 輸血による感染
肝炎ウイルスの検査
ウイルスに感染してすぐに発症する急性肝炎は入院が必要な重度のものから、「風邪かな?」と思っているうちに治まってしまう軽度のものまであります。
肝炎ウイルスに感染していることを知らないまま過ごし、肝臓がんができて初めて自分が肝炎ウイルスにかかっていることを知る人もいます。肝炎ウイルスは血液検査で調べられます。
肝炎ウイルスの治療
もし、肝炎ウイルスに感染していることが分かった場合には、抗ウイルス剤やインターフェロンなどで治療を行います。
C型肝炎ウイルスには予防のワクチンがありませんが、B型肝炎ウイルスには予防のワクチンがあり、医療従事者などを対象に接種が行なわれています。
ピロリ菌は胃がんの、肝炎ウイルスは肝臓がんの原因となる感染症です。
実際には長年これらの感染症にかかっていることを知らずに過ごし、がんが見つかって初めてそのような病気であったことを知る人が多いのです。
ピロリ菌も肝炎ウイルスも、感染してからがんを発症するまでには長い年数を要します。これまで検査を受けたことがなければ、一度検査を受けておくことをおすすめします。
これらの検査は人間ドックのオプションに含まれていることもありますが、自費で検査できる病院もありますので、病院で相談してみてください。
内科医
春田 萌
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医
大学病院、二次救急病院、在宅医療を経験。