尿酸値が高くても痛風じゃなければ大丈夫?
内科医師の春田です。
病院で定期的に血液検査をしていても、患者さんには「せっかく健康診断を受けたのなら、結果を見せてくださいね」とお願いしています。
病院の診察は保険診療なので、検査できる範囲が限られています。
ときには健康診断の結果を見せてもらうことで新しい病気を見つけたり、処方している薬の量を調節したほうがいいと気付くことがあるのです。
健診の種類によっては医師から結果説明を受けることもありますが、普段かかりつけでない医師からの結果説明は一般的な内容になりがちです。
かかりつけの医師であれば、「この数字はちょっと高いけど気にしなくていいですよ」「この部分は正常範囲ですが、年々増えてきているので気をつけてくださいね」とその人に合ったアドバイスをしてもらえることもあるので、かかりつけの病院がある人は、ぜひ主治医に健診結果を見てもらいましょう。
尿酸って何?
ここで、何人かの患者さんが口にしていた気になることを耳にしました。
「ちょっと尿酸値が高いのだけど、痛風になったことはないから大丈夫でしょ」
いいえ、そうとは限りません。
尿酸とは、細胞の垢みたいなものです。人間の体では常に古い細胞を破壊して新しい細胞に入れ替えています。その際に生まれるプリン体が尿酸のもとになります。食べ物でも細胞の多い食べ物にはプリン体が多く含まれています。
卵で理解するとわかりやすいと思いますが、たらこやイクラはその1粒1粒にプリン体が含まれていますが、ニワトリの卵は1個の大きな細胞なので、たらこ1粒とニワトリの卵1個の中のプリン体がほぼ同じ、とイメージすると、どんな食べ物にプリン体が多く含まれるかイメージしやすいでしょう。肉や魚もたくさんの細胞でできているので尿酸値が増えやすい食べ物です。
痛風の原因は尿酸
「尿酸がたまると痛風になる」というのは多くの人が知っています。
尿酸は血液の中に溶けることができる量が決まっています。それを上回って尿酸が体内に増えると、関節などで溶けることができなかった尿酸が結晶をつくります。
尿酸の結晶はウニの殻のようにトゲトゲしていて、それが体の中にできると思うだけでとても痛そうです…。
痛風になりやすい位置は足の親指の付け根。
あまりの痛さに救急車を呼ぶ人もいるようですが、それほどの痛みが発作的に起こります。
一度痛風になった事がある患者さんは「2度となりたくない」と言います。(が、食生活が改善できず繰り返す人は多いです)
「尿酸⇒痛風⇒すごく痛い」というイメージは多くの人にあるようですが、それ以外のイメージがないので、「痛風にさえならなければ、尿酸値が高くても心配ない」と誤解している人が多いようです。
尿酸が増えて透析になることも
ところが、尿酸が増えて困るのは痛風だけではありません。
体内で過剰になった尿酸は、尿と一緒に体外に排出されますが、腎臓で固まってしまうと尿管結石になります。尿管結石は多くが5mm程度の小さな石ですが、特に細い尿管を転げ落ちたり、途中で引っかかって腎臓から出てきた尿が塞がれたりすると、転げまわるほどの痛みになります。
痛み止めなどを使っているうちに石が尿管を通り抜けると、ウソみたいに痛みは消えます。時には大きな石ができて、自然には排出できないこともありますが、その場合は体外衝撃波や尿管にカメラを通して石を砕く治療が必要になります。
他にも、痛風腎という病気もあります。これは腎臓の壁に尿酸がくっついて腎臓の機能が低下する腎臓病です。診断は腎生検で腎臓の一部を採取して顕微鏡で尿酸がくっついていることを見つけるのですが、尿酸は腎臓全体にくっついているわけではないので、腎生検を行っても証明できないことも多く、一般には尿酸値が高い人に腎機能低下があり、他の原因が見つからないときに痛風腎として対応することが多いです。
治療は尿酸値を下げることが主体になりますが、痛風腎になってから尿酸の治療を開始しても効果がなかったという報告もあり、やはり大事なのは腎臓が悪くなる前から尿酸値をしっかり下げておくことです。
数は少ないのですが、日本では年間約120人程度の人が腎結石や痛風腎が原因で透析になっています。
脳梗塞や心筋梗塞になることも
その他に尿酸値が高い状態が続くと血管に炎症を起こし、動脈硬化を進める可能性があることが報告されています。
一般に尿酸値の高い人は消費カロリーよりも摂取カロリーが上回っている(簡単に言うと食べ過ぎている人が多い)ので、糖尿病や脂質異常症も合併しやすく、このような状態では当然動脈硬化になりやすいと考えられていました。
しかし近年の調査では、糖尿病や脂質異常症のあるなしにかかわらず、尿酸値が高いだけでも動脈硬化を進める可能性があると考えられています。
動脈硬化が進行すれば心筋梗塞や脳梗塞になる危険性が増加します。
尿酸値を下げる食事法
❶プリン体の摂取を減らす
尿酸値を下げるには、食事で摂取するプリン体の量を減らすことが重要です。
プリン体の摂取量は1日400㎎以下にするようにしましょう。(『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』より)
プリン体を多く含む食品は、レバーなどのモツ類や、青魚の干物、エビやカニ、貝類などが挙げられます。
あまり神経質になる必要はありませんが、食べすぎには注意しましょう。
❷アルカリ化食材の摂取
尿をアルカリ化する食材を摂取することで尿酸を溶けやすくし、排泄されやすいようにします。
海藻や野菜、きのこ類、イモ類などの食品や、低脂肪牛乳や日本茶などを積極的にとりましょう。
ひじき、わかめ、こんぶ、干しシイタケ、大豆、ほうれん草、ごぼう、さつまいも等
❸十分な水分補給
水分をたくさん摂取すると尿酸の排泄がスムーズになります。1日2ℓの水分量を目安に補給しましょう。
❹アルコールを控える
お酒を飲みすぎると、尿酸の排泄抑制や過剰生産の原因になります。
特にビールにはプリン体が多く含まれます。アルコールはなるべく控えましょう。
めりぃさん編集部おすすめ食材
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尿酸値を下げるアルカリ化食材など、こだわりの食品をご紹介しますのでぜひお試しください。
まとめ
尿酸値が高い状態を放置していると、痛風だけではなく、尿管結石や痛風腎、場合によっては心筋梗塞や脳梗塞にまでなる可能性があります。
これらの病気は突然症状が出ることが多く、症状が出てからでは手遅れの場合もあります。
健診で尿酸値が高いと言われている人は、症状がなくても一度病院で食事指導や内服薬による治療を相談してみて下さい。
<参考HP>
- https://wellbeingnaika.com/ckd_uric_acid/
- https://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html
内科医
春田 萌
日本内科学会総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会専門医
大学病院、二次救急病院、在宅医療を経験。