医療と介護で地域を支える企業、白ゆりグループ
撮影/蘒野孝行 イラスト/南 佳奈江
構成・文/明滝 園
年齢とともに、咀嚼した食べ物を飲み込みづらくなったと感じたことはないでしょうか?
今回、今ある“飲み込む力”を保つ方法を、白ゆりグループのスタッフが解説します。
訪問看護リハビリステーション 白ゆり新さっぽろ 言語聴覚士
石川千亜紀さん
「利用者さまの価値観などを尊重した支援をします」
訪問看護リハビリステーション 白ゆり新さっぽろ 理学療法士
渡會秀司さん
「利用者さまやご家族との信頼関係を大切にします」
“飲み込む”ことはのどの筋力によって行われる
食べ物や飲み物を飲み込むことを「嚥下」といいます。
咀嚼したものや唾液は、喉頭(のど仏)の働きによって食道に送られますが、加齢とともにのどの筋力が衰えることで喉頭をうまく動かせなくなり、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)が弱まってしまいます。
これは、シワができる、白髪が出てくることと同じように、加齢によって誰しもに現れる症状です。
飲み込めなくなるだけではない! 嚥下障害の怖さ
食べたものが飲み込めなくなる、飲み込みにくくなることを「嚥下障害」といいます。主な症状としては、次のものが挙げられます。
- 飲み込みにくさを感じる
- 食事中によくむせる
- たんがのどによく絡む
- 口の中に食べ物が残る
- 食事に時間がかかるようになった
この中でもむせは代表的な症状ですが、むせが起こらない「不顕性誤嚥」という症状もあります。本人も周囲も気付かないうちに嚥下障害が起こってしまうのです。
これらのことから、食事が楽しめなくなることによって連鎖的に起こる不調も嚥下障害の怖いところ。例えば、食べ物から摂取する栄養が少なくなれば、栄養失調や脱水状態に陥る可能性があります。
また、体力の衰えは意欲の低下につながり、うつ病などを発症するケースも。単純に飲み込めなくなる、飲み込みづらくなるだけではなく、生活の質や健康に大きな影響を及ぼしかねません。
さらに注意したいのが、誤嚥性肺炎。胃に送られるはずの食べ物が細菌や唾液とともに気管を通って肺に入り、肺炎を起こす疾患です。通常なら反射的にむせて食べ物を口から排出しますが、のどの筋力が弱まっていることでその反射機能が働かず、肺に入ってしまうのです。
厚生労働省の調べによると、誤嚥性肺炎で死亡した人は2019年には4万354人だったのが、2020年には4万2746人に増加しています(※)。昨今は、コロナ禍によって人と話す機会が減少。のどの筋力を使う機会が減っていることが嚥下障害を誘発し、誤嚥性肺炎を発症する人が増加した一因になったと推測されます。
特に高齢者の場合、自炊が負担となったり、活動量の減少で食欲が落ちしたりすることで、結果的に食事の回数が減り、のどの筋力低下を招いているケースもあります。
※出典:厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況、厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況
自覚がない場合もある誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎の典型的な症状として、発熱、咳、たんの増加が挙げられます。しかし、これらの症状は必ず起こるわけではありません。食欲がない、なんとなく意欲がわかない、微熱がある、のどがゴロゴロするなど、日常的な不調と区別がつきにくい場合もあります。
受診するきっかけがなく、いつの間にか重症化していた例も。免疫力が低下している高齢者は、体に異物が侵入しても戦う(熱を出す)ことが難しいため、本人はなおさら自覚しにくいのです。
嚥下障害や誤嚥性肺炎にならないためには、口腔周りの健康を保つことが重要。例えば、歯磨きを怠っていると口腔内が雑菌だらけになり、それが誤嚥で肺に入れば肺炎を起こすリスクも高まります。
ところで、「フレイル」という言葉をご存じでしょうか? 加齢による心身の衰えが出ている状態をいい、健康な状態と要介護状態の中間地点に当たります。口腔に関する「フレイル」は、「オーラルフレイル」と呼ばれています。
あなたは大丈夫? オーラルフレイルチェック表
「嚙めないものが増えた」「水分を飲み込みにくくなった」。
こんな変化を感じた方は要注意! まずは自分の口腔の健康状態を確認してみましょう。
オーラルフレイルをどこでも簡単にチェックできる問診票です。
3点以上の「危険性あり」となった人には、専門的な対応が必要です。
合計の点数が
0〜2点
オーラルフレイルの危険性は低い
3点
オーラルフレイルの危険性あり
4点以上
オーラルフレイルの危険性が高い
※歯を失ってしまった場合は、義歯などを適切に使って硬いものをしっかり食べることができるよう治療することが大切です。
出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島先生らArch Gerontol Geriatr.2021
嚥下障害にならないためのケアをご紹介!
現状より嚥下機能を低下させないために、口腔ケアはもちろん、食べ物の硬度と全身を意識した姿勢による食事が大切です。
口腔内を清潔に保って雑菌の増加を予防
口腔内を清潔に保つことは、嚥下障害を防ぐための基本。汚れが付着しやすい箇所に注意し、毎日歯磨きを行いましょう。
気を付けたいのが、寝ているときも唾液を誤嚥する可能性があるということ。もし誤嚥した場合、唾液に含まれる雑菌が多いほど誤嚥性肺炎になるリスクは高まります。
それを減らすために、夜の歯磨きは、より丁寧に行うことがポイントです。
身体状況に合わせて食形態を見極める
軟らかい、あるいは水分を多く含む食べ物が飲み込みやすいとは限りません。嚥下機能の状態は人によって異なります。
認知症の方だと、軟らかい食べ物を「食べ物」と認識できないことも。介護者が判断するのは難しい場合が多いので、言語聴覚士がいる医療機関へご相談ください。
正しい姿勢で口腔周りの筋肉を使う
食事をするときの姿勢で特に大切なのが、膝を90度に曲げて足を床にしっかり付けること。
人は足で体全体を支えて、のど周辺の細かい筋肉や口腔器官を使っているからです。
車いすに乗ったまま食事をする場合は、フットサポートから足を下ろし、床に足を付けてからにしましょう。
やってみよう! 嚥下体操
口周りだけでなく肩や胸の筋肉を刺激したり、ほぐしたりすることは嚥下機能の維持につながります。毎日食事の前に10分程度やってみましょう。
頰を膨らませたりすぼめたりを繰り返す
頰を刺激する体操です。頰は食べ物を口の中で移動させるときに使われ、両頰には唾液腺があります。
①できる限り口に空気を含み、頰を思いきり膨らませる。食べ物を嚙むときに使われている咬筋(上下の歯を嚙み合わせたときに動くあごの筋肉)をほぐす効果もある。
②今度は思いきり頰をすぼめる。この膨らませたり、すぼめたりする動作を3~4回繰り返す。主に頰と口周りの筋肉が刺激される。
舌で左右の口角に触れ最後に伸ばす
舌は7つの筋肉から構成され、これらの筋肉が衰えると舌がだらりと落ちてきてしまい、嚥下機能が低下する原因に。
②右の口角に当てる。それにより舌の位置を動かす外舌筋が鍛えられる。
③舌をべーっと出して伸ばす。
これら3つの動きを3~4回繰り返して。
肩を上下に動かす
肩の筋肉をほぐすことで、胸が開きやすくなります。
①両肩をできる限り上に上げる。
②①の状態から、すとんと肩を落とす。繰り返すことで胸筋の緊張がやわらぎ、胸が開きやすくなるのと、食道が狭まることを予防できる。
「パパパ」「カカカ」「ラララ」と発音する
唇と舌の動きに意識を向けながら、ゆっくり、繰り返し発音しましょう。
「パ」…すぼめた唇を瞬間的に開口することで、口輪筋(唇周りの筋肉)を刺激。
「カ」…舌の奥の筋肉を使う発音。
「ラ」…舌先を上あごに付けて舌内部の筋肉を使う。
白ゆりグループ(株式会社メディカルシャトー)
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